e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

0歳からの伝統工芸品

12月8

aeru 『0から6歳の伝統ブランドaeru』の京都直営店『aeru gojo』が先月オープンしたとあり、テレビやネットショップで気になっていた商品を実際に観てみたくて、足を運んでみました。
お店の場所は駅前や繁華街には無く、いわゆる碁盤の目の中。絹糸・綿糸を扱う明治4年創業の「糸六」のある京町家の1階にありました。
「(和菓子の)末富さんの向かい」と言った方が分かりやすい人もいるかもしれません。
帳場の様な空間に、子供から大人まで和様を問わずに使えそうな漆塗りのお食い初めセットや、「こぼしにくいコップ」の京都限定品などが並びます。
正直なところ、「ちょっとしたプレゼント」にするには、なかなかのお値段。
売り手と買い手、職人さん達にとって三方良しとするには、やはりそうなるのでしょうが、「一生ものを贈る」という意気込みであれば、むしろお手頃な価格設定だと言えるかもしれません。もちろん、修繕して使い続ける事も可能。
看板商品とも言える「こぼしにくい器」は、特に砥部焼のものは電子レンジや食器洗い洗浄機、オーブンにも入れることができ、子供だけでなく、赤ちゃんを抱きながら片手で離乳食を食べさせる事の多いママさんにとっても安定感があって使いやすいそうです。
しばし迷った結果、「愛媛県から手漉き和紙のボール」を、甥っ子へのクリスマスプレゼントにする事にしました。
まだ赤ちゃんである彼にとっては、初めて触れる和紙となるかもしれません。
指で突き破って穴だらけにしても、中に入っている鈴の音の変化を楽しんだり、職人さんに漉き直してもらう事もできるそうです。
触る事が大好きな赤ちゃん。和紙の手触りや籐の木で編まれた形から生まれる不規則な動きなど、ゴムやプラスチック製のおもちゃには無い楽しさを感じてくれるかもしれない。
喜んで遊んでくれるといいな。

2015年12月08日 | お店, 和雑貨, 町家 | No Comments »

京都発祥のジュエリーブランド

12月1

niwaka クリスマスイルミネーションを見かけて、聖夜に向けてプロポーズを考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
京都で挙式をする人が増えているように、和風のデザインを取り入れた婚約指輪、結婚指輪もよく見かけるようになりました。
京都発祥のジュエリーブランドの一つとして知られる「」は、その意匠や石の質の良さはもちろんのこと、純白の陶器におさめられ、桐箱に真田紐をかけて慶びを表した装いは、心躍るもの。証明書もたとう紙に包まれています。
西洋の「黄金比」に対して「白銀比(大和比)」と呼ばれ、法隆寺や生け花、A判用紙に至るまで日本人が古来より美しいと感じてきた正方形の形が正面に現れる様に、独自のカットを施しています。
もう一つ特筆すべきは、ダイヤモンドはしばしば戦争での取引に使われる事があるといい、俄では紛争地を経由しない「コンクリフト・フリー」のダイヤと選んでいるそうです。
一生ものだから、良いものを贈って喜ばせたい。とはいえ、贈る側が前もって相手の好みをリサーチして、指のサイズも聞き出して…というのは案外難しいもの。
後で一緒に選びたいという人のために、大粒のクォーツをダイヤの様にセッティングした「プロポーズ専用のリング」もあります。ファイト!

2015年12月01日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

D&DEPARTMENT KYOTO

11月3

d  仏光寺の境内に、デザイナーのナガオカケンメイさんや京都造形芸術大学の学生らがギャラリーを併設したセレクトショップ「D&DEPARTMENT KYOTO」を開店して、もうすぐ一年になろうとしています。
もとは物置として使われていた和合所を改装して販売されている品は、京都の伝統工芸品や調味料、雑貨等、流行や時代に左右されずに愛されてきたものたち。
おそらくどこかのお店で使われていたと思われる岡持ちや木のお盆、昨年営業を終了した「京都国際ホテル」の名前が裏に入ったノリタケの白いお皿、実験用のシャーレに書籍など、新品からアンティークまで、アイデア次第で新たな価値を生み出しそうなわくわく感で満ちていました。
隣のお茶所は、仏光寺で採れたかりんで作ったドリンクや京都の名産を上手くアレンジして取り入れた軽食や甘味が楽しめます。
京都店は、「ロングライフデザイン」をテーマに、物販・飲食・観光を通して地域の「らしさ」を見直す「D&DEPARTMENT」プロジェクトの10 店舗目に当たり、山梨や富山などの他の店舗の情報が掲載されている専用誌もここで読む事ができます。
単なる名産の寄せ集めではなく、セットメニューのお茶や添えられた塩昆布も丁寧に作られていて京都らしさがちきんと感じられ、ショップで見かけた調味料や器も使わており、それが地域の「らしさ」を現代生活に取り込むインスピレーションを与えてくれるので、思わずお茶所から再びショップに戻ってしまったほど。
「防火用」と書かれた赤いバケツを衝動買い。そう、京町家の軒先でよく見かけるアレです。
年末のお掃除用や、傘立てとして使ってみようかな。

心を立体的に表現する水引

10月19

oosima 親戚の結婚を控え、祝儀袋を買いに「大嶋雁金屋」を訪れました。
普段ならデパートや文具店、コンビニでも気軽に求められる物のですが、昔から室町の呉服屋さんご用達の老舗と聞いて、どんな所だろうと好奇心が湧いたためです。
小笠原家から直伝の折型を守る老舗、となると敷居が高いのでは、との心配は無用でした。
ショーウインドーには、職人さんがお遊びで作ったと思われる水引製の、スポーツ選手の人形達が展示されていました。隣にはマジメに作った、こぼれんばかりの梅や松を載せた水引の宝船。お店の方も自然体で、筆耕もお願いしました。
改まった形で結婚祝いをお金で贈る場合は、新郎宛の目録には「松魚(しょうぎょ)」、新婦宛には「五福」と書くそうで、後で調べてみると、それぞれ肴と呉服を表しているそうです。
なお、京都では、お祝いの品を持っていくのは正式には結婚式当日ではなく「大安の日の午前中」と決まっていて、その日のために準備した目録や祝儀袋、袱紗等を並べるとなかなか壮観です。
店内には、立派な光沢を放つ華やかな祝儀袋もあれば、キューピー人形の付いた、ちょっと砕けた楽しい出産祝いの祝儀袋も並べられています。もちろん、どの水引飾りも職人さんの手作業によるもの。
色とりどりの水引の輪っかを自分の飲み物の容器に掛けて目印にできる、ボトルマーカーとしての珍しい商品もありました。
縦に細長い紅白の水引は、マンション住まいの人でも扉に下げるお正月飾りになるかと思い、少々気が早いけれど購入することに。
掛け紙に印刷された水引も一般的になってしまった現代ですが、心を形で表した立体感もまだまだ大切にしていきたいですね。

京の老舗宝飾店

10月5

nara ここ最近、身の回りでお祝いごとが多いので、冠婚葬祭用に真珠の指輪を買う事になりました。
そこで知人に紹介してもらったのが、江戸の文化文政期から京都で暖簾を掛けている「奈良甚」というお店。
和菓子や漬物の老舗はよく聞きますが、「京都の宝飾店の老舗」とは珍しいと思いませんか?
「奈良」は創業者の出身地が由来で、江戸の頃には珊瑚やべっ甲などを扱っていたそうです。かつては六角富小路東入ルに本店を構え、和風のショーウインドウのある木造建築の写真が掲載された昔の雑誌を見せて下さいました。その雑誌に紹介されている他のべっ甲屋さんなどは、時の流れの中でもう廃業してしまっているようです。
この本店も戦争の疎開で取り壊されてしまい、職人さんも各地へ旅立ち、現在では跡形も無く駐輪場となってしまっているのが非常に残念ですが、今も近くのビルの二階で営業されているのは代々店主の命が繋がってこそ。
小さな店内で「いつまでやるか分からへんけど…」と呟くご当代の事務机の隣に据えられた和箪笥と、奥からワンちゃんの元気な鳴き声が聞こえてくる暖簾は、往時の名残なのでしょうか。
この指輪を機に、今でも京都で細々と商う老舗の存在に触れられたのが嬉しく思いました。

2015年10月05日 | お店 | No Comments »

京のお昼間接待コース

9月14

hana 他府県の知人達が京都に来たので、「花咲 錦店」に案内しました。
以前に食通の方から教えてもらっていたお店で、実は、京都でも有名な料亭での修行経験を持つ人が腕をふるっているそうです。
最初のうちは一皿毎のボリュームが少な目かな?と感じますが、終盤になるとしっかりお腹も膨れて良い加減になります。
締めは、珍しく漬物のお寿司。じゃこご飯にも変更できます。
一番手頃な3300円のお昼の会席「柏木」コースを選び、適度にビール等を頼んでも、6名で3万円ちょっと。お土産に手作りのちりめんじゃこを一人ずつ頂けるのも心憎い演出中です。
中でも、かぼちゃのあんにぶぶあられをまぶし、あんかけにしたひと品は人気のメニューらしく、あちこちから「美味しい…」と匙ですくいながらしみじみと呟く声が。
細い路地を進めば町中の喧騒も感じさせず、肩ひじ張らずに寛げる個室に明るい和服の仲居さん、舞妓さんや芸妓さんを呼ぶ事もできるそうで、
「京都らしさのあるお店の和食で、もてなしたい」「できれば財布にも優しく…」というニーズに特化したお店を目指しているのかもしれません。
お店の人に見送られた後は、すぐそばの錦市場をぶらぶら歩き、「大国屋」の「ぶぶうなぎ」をお土産に持たせて、疲れたら「SOUSOU在釜」で一服。
客人にも楽しんで頂けたようでした。

伏見稲荷大社の呈茶所「松の下茶屋」

8月31

matu 非公開文化財特別公開の際に何度か公開されていた伏見稲荷大社のお茶屋の一部が、6月から呈茶所「松の下茶屋」として開放されています。
お品書きはお茶と和菓子のセット(1200円)のみで、訪れた時の飲み物は、抹茶と水出し煎茶、グリーンティーの中から選ぶようになっていました。
もとは当社の官舎であったのが後に料亭として使われ、再び大社が買い取ったという経緯があり、御所由来と言われるその風格漂う造りやしつらいに名残があります。
洋間もある屋敷の廊下を渡って大広間に足を踏み入れると、眼前に緑豊かな庭園が広がりました。
稲荷山から降りて来たばかりの火照った身体に、氷を浮かべた冷たいお薄や、甘みが濃厚に引き出された煎茶が喉をすうっと通り抜けていきます。
境内はたくさんの人で賑わっていますがこちらは静かで、かといって客足が絶えることも無く、すっかりお茶を飲み干した客人達は、銘々にぼんやりとお庭を眺めながら、心身を潤している様子。
5名以上の希望があれば、二階でお茶席を開いて下さるそうです。
お昼は賑やかなお稲荷さん参道の茶店できつねうどんや稲荷寿司などを食べ、お山を巡った後は松の下茶屋で庭と茶碗の緑でクールダウン、という参拝計画もいいですね。
土日と祝日、毎月1日限定の営業です。

パスザバトン京都祇園店

8月24

pass 元は料理旅館、その後天ぷら店となっていた祇園新橋にある伝統的建造物が、京都市へ寄贈され、この夏に新感覚のセレクト・リサイクルショップとして再活用される事になりました。
国の重要伝統的建造物群保存地区内の白川沿いに建つこの2階建ての木造建築は、明治時代中期に建てられたといい、保存活用を、との所有者からの意向を受けて「民間の自由な発想で、京都の文化を世界に発信する施設として蘇らせる」事を目的として活用する事業者が初めて公募された例となりました。
この店は「思い出の品」を所有者の思いと共に引き継ぐ人へ橋渡しするというコンセプトで、「安さ」を求めるリサイクルではありませんが、デッドストックとして倉庫等に眠っていた日本各地の陶器と豆菓子を組み合わせた商品(ミニ絵本付き)は、お土産としても、アンティーク入門としても記念に購入できる価格でした。
この店の家賃は、景観保全のための基金にも積み立てられるそうで、売り上げは出品者と店で折半し、出品者が希望すれば児童福祉や環境等に寄付する仕組みも設けられています。
カフェも併設され、内装は随分と現代的に変わってしまった感はありましたが、これも古いものと新しいものを融合させ、受け継いでいく為の良い塩梅を模索する現代の京都の姿でしょうか。
店内にいた外国人旅行者達の目にはどの様に映っていたのか、気になるところです。

祇園祭は浴衣で乾杯

7月21

daimaru  祇園祭・前祭の宵山。浴衣に下駄を引っ掛けての晩御飯は二箇所で、それぞれ真逆の風情を楽しみました。
まずは錦市場の中にある魚屋さん「錦大丸」(075-221-3747)。刺身パックの並ぶ冷蔵ケースをぐるりと囲む発砲スチロール箱をテーブルに、ビール瓶のコンテナをイスに据えた即席居酒屋です。
ケースを開いてイカ等の好きな刺身の盛り合わせを選び、お隣さんと肩を並べて冷酒で乾杯。揚げたての鱧の天ぷらや、鯖や鰻の寿司はお店の奥から運ばれて来ます。
もうここ数年、前祭宵山期間のみの定番になっているそうで、愛犬連れの常連さんの姿もありました。
その後は祇園さんの魔力に吸い込まれていくように足取りは八坂神社の方向へ。
ほろ酔いのまま、人影もまばらになった花見小路の奥から祇園甲部歌舞練場へと入り、今度は「祇園 ICHIBAN ビアホール」へ。
行燈の灯りが落ちる赤い絨毯、窓一面にはライトアップされた日本庭園が広がり、四条通りの喧騒が嘘のような静けさでした。
庭園に向けた小さなカップルシートやテーブル席、立ち飲みスペースに、金屏風の奥には、12名程が一同に座れる長テーブルの半個室空間もありました。
冷房の効いた少し薄暗い即席ビアホールで、歩き疲れた足指をゆっくり休ませ、酔い覚ましにお庭の散歩も楽しめました。
同時開催中の「舞妓物語展」、「フェルメール光の王国展」も共に8月31日まで。

「京町家ちおん舎」

7月13

tion ガラスの壺から奏でられる鈴虫の声に招き入れられたのは、三条衣棚を上がったところにある「ちおん舎」。
大店の商家の佇まいを色濃く残す京町家は、すっかり夏のしつらいになっていて、足裏にひんやりと感じる網代や庭から簀戸(すど)を抜ける風、そして眩しい日光を遮る薄暗さが心地良い。
広大な敷地の中には、多目的に使用できる広間や露地や水屋を有する4畳半の茶室、大きなまな板のあるキッチン等様々なスペースがあり、同じ日にそれぞれの空間で複数の催しが行なわれていても、互いを邪魔しない許容量があります。
京町家をイベントスペースとして開放している所はたくさんありますが、特筆すべきはここの催し内容のユニークさでしょうか。
最近の予定だけでも落語会にご近所さんが集うヨガのほか、「重ね煮」という調理法の料理教室や、氷水で点てたお抹茶で楽しむお茶席体験、「星ソムリエ講座」などなど、なんだかどれもひとクセあって気になるものばかり。
防空壕の跡が床から覗ける「J-spiritギャラリー」では、メイドインジャパンの作品を展示販売していて、この大きな京町家全体が、作家(アーティスト・デザイナー)や作り手(メーカー・職人)を育てる家なのですね。
ちなみに、この辺りは祇園祭の後祭の中心地。最も近くには役行者山があります。

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