東本願寺の隠れた名所
初弘法をぶらっと歩き、境内のおでんの屋台で腹ごしらえした後、シェアサイクルに乗って東本願寺へ。
「京の冬の旅」キャンペーンで東本願寺の宮御殿と桜下亭(ともに重文)が特別公開されています。
京都駅から徒歩約7分という立地でありながら「オーバーツーリズム」という言葉を感じさせないほど静かで広大な境内です。
ギャラリーに入り、奥の宮御殿へ。
赤い畳縁が珍しく、襖には宮中の行事を描いた大和絵が飾られています。
嵯峨野で鳴き声の良い鈴虫や松虫を籠に入れて楽しむ「撰虫(むしえらび)」や、初子の日に若松の根を引いて占い、若菜を摘む「子日遊(ねのひのあそび)」は初めて知りました。
傾斜した築山と池の水は、実は防火のため。今でこそ水を汲んで張っていますが、かつては琵琶湖とこの地との高低差を活かして引き込んでいたのだとか。
「用と美」を兼ね備えた池泉式庭園です。
撮影できるのはここまで、「桜下亭」へ進みます。
洗練された意匠の建物。大地震から逃れて東本願寺に保護された円山応挙の襖絵「稚松(わかまつ)図」「壮竹図」「老梅図」が三室に配され、それぞれがまるで人生のステージのようです。
隠居した門主がすごした部屋は、浄土真宗における阿弥陀如来の広大な救済を記した「本願海」の軸が床の間に下がり、随所に貼られた金箔は、経年による味わいの変化も見られます。
作者は不明ですが、亭内には犬やうさぎの姿も。
数寄屋風の意匠で、機織りの筬を模した欄間はかなりモダン。釘隠しは部屋の内外で異なり、梅の花弁をがくの側から表現するなど、いずれも他では見たことの無いデザインでした。
これらの建物が公開されるのは、「京の冬の旅」において42年ぶりといいます。
何度も前を通るので知ったつもりになっていた東本願寺でしたが、まだまだ知らない部屋が隠されていたのですね。
なお、京の冬の旅期間中の毎週金曜・土曜日はインターネットからの完全事前予約制で、「僧侶がご案内する特別拝観」も利用できます。