e-kyoto「一言コラム」

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瞳を閉じた能面

12月30

yoro年の瀬に、能『弱法師(よろぼし)盲目之舞』を初めて観ました。

目を閉じた珍しい面を目にして以来、気になっていたのです。

親に捨てられ、盲目となった乞食は、よろよろとよろめき歩くので人々から「弱法師」と呼ばれ、後に思わぬ形で父と再会します。
先にあらすじを読んだだけで泣きそうな心地になる物語です。

身体の一部に障害がある人は、「片端者」と呼ばれて差別されてきたといいます。
何百年もの昔から世の中は健康優良な男性を基準に作られきて、令和の時代になって女子供や病気や障がいを持つ人達の人権は十分に守られてるだろうか、と飛躍して憤ってしまいました。

俊徳丸にまつわる伝承は、謡曲や説経節、人形浄瑠璃や歌舞伎、落語、絵画の題材にもなっています。
近代では三島由紀夫の戯曲や、俳優の白石加代子さんと藤原竜也さんが演じた『身毒丸』という舞台もありました。

物語上でフォーカスしている部分は異なるものの、この伝承の何がこれほどまでに派生を繰り返してきたのか。
内容も異なっているようですが、ぞれぞれに触れてみれば何かが見えてくるのでしょうか。

物語の舞台は大阪の天王寺ですが、社会福祉施設だった「悲田院」は、京都の泉涌寺の塔頭にもその名が残されています。

2024年12月30日 | お寺, 芸能・アート

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