立ち止まる刹那
6月8
智積院の金堂の裏から奥の墓地までに至る道のりは、知る人ぞ知る紫陽花の隠れた名所です。
想像以上の紫陽花の株数に思わず足を止めてしまいました。
人の手が入り過ぎず野趣を残したような印象の紫陽花たちは、赤と青で咲き分けた毬のような花もよく見つかります。
奥の一角に並ぶ墓石は「学侶墓地」。江戸時代に全国から宗派を超えて集い智積院で約二十年もかけて修業する中で、志半ばで亡くなった人々を祀ったものだそうです。
無人というほど寂しいわけでもなく、数人が土の上を歩む音と、鳥のさえずりだけが響く静寂の世界。
初夏でも鴬が鳴く事があるんですね。
「静かな観光地」の「静けさ」ではなく、世俗から切り離された「静けさ」に身を浸してみたい人はぜひ。
境内を歩いていると、規則正しく並んで進む僧侶の列に遭遇。
京都ではそう珍しい光景でもありませんが、一人一人と通り過ぎる度に「こんにちは」と頭を下げられました。
反射的に「こ、こんにちは」と首を垂れたものの、自分はきちんと足を止めていなかった事に気付きました。
本来、挨拶は歩きながらではなく、立ち止まってするもの。
背筋がすっと伸びる思いがして、その後も境内のところどころでお坊さんと挨拶する度に心がけました。
一秒にも満たないこの動作で、相手から大切にれているような気持ちになる。
まだ小さい子供達にも伝えていこうと思います。