涼を分かち合う菓子
6月3
実家から送られて来た荷物の中に、甘泉堂の水羊羹が入っていました。
祇園の路地裏にある名店と呼ばれています。
持った瞬間にぶにょっと箱がへこんでしまうほど柔らかく、慌てて机の上にそっと置き直しました。
ゼリーや寒天とも違う、水羊羹の瑞々しさを表すために極限ぎりぎりまで水分を含ませているのでしょうか。
箱からするりと出してみると、既に一口分ずつ切り分けられているのが有難い。
淡い小豆色の端正な佇まいに対して、霧を含んだようなもろもろとした舌触りが口中にすうっと馴染む、素朴な味。
なぜか、「しゅっとしてはるけど、気ぃやすい人」という言葉が頭に浮かびました。
「淡白」という言葉で表現するには足りないけれど、いい器を選びたくなるような気品があります。
羊羹を食べると即座にお茶に手が伸びるものですが、こちらのは甘さがかなり控えめなので、甘いものが苦手な人とでも涼感を共有できるかもしれません。
不思議と何度もおかわりしてしまいたくなる穏やかな味で、抹茶より煎茶や紅茶が合いそうです。
明日の午後は熱いお湯で香りを立たせた新茶を淹れて、ひんやり冷やした水羊羹とともに涼を取ることにしよう。