e-kyoto「一言コラム」

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美は「愛でる」もの

9月25

eki 美術館「えき」KYOTOにて開催中の「京の至宝 黒田辰秋展」。
お茶の稽古を通して初めて出会った黒田辰秋の作品は、一面に螺鈿が施された中次の茶器と、この展覧会のポスターと同じ四稜捻の形をした朱色の茶器でした。
伝統的な木工芸なのに、どこかモダンで、現代洋間に置いても違和感の無い意匠。
照明を反射して輝くというよりも、内側から光が滲み出るかのような発色。
祇園の菓子舗「鍵善良房」にも、彼が手掛けた菓子重箱があると聞いて、帰りの足でそのままお店まで足を運んだ記憶があります。
これらの作品を、今回美術館という空間でケース越しに観ていると、そのちょっとの距離感が何だかもどかしく感じられ、これまで稽古場で直接手に触れて愛でる事ができたのは非常に幸運だったのだと思わずにはいられませんでした。
無数にある芸術品の中で、絵画作品こそ手に触れる事は叶いませんが、やはり工芸などの造形作品は、飾って眺めるだけでは勿体ないし、その魅力は十分には伝わってきません。
親や親族から美術工芸品を受け継いでも、「その価値が全く分からない」と手放してしまう人は、それらが距離を置いて飾られるかしまい込まれたままで、実際に使ってみるという機会の積み重ねが与えられなかったからではないでしょうか。
茶の湯が現代でデザインを学ぶ学生やアーティストから今もなお支持されているのも、こういった作品を手に取って重さや質感を感じたり、手中で光の当たる角度を変えてみたり、蓋を開けて裏側を見てみたりして、実際に触れる事ができるからなのかもしれません。
もしも自分が将来、何かしらの芸術品を求めるような事があるとすれば、極力使って、その美を他の人々と共有したいと思います。

2017年9月25日 | お店, 和雑貨, 芸能・アート

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