祇園でおもてなしを学ぶ
自宅で料理教室をされているマダムの主催で、「祇園丸山」の建仁寺店で昼間のお食事会をしました。
この様な料亭では、予約の際に苦手や食材やアレルギーの有無はもちろんのこと、どの様な用途での利用なのかも尋ねられます。
今回は参加メンバーの中でお祝いごとがあり、また訪れた先月は五月の節句だったので、床の間には立派な鎧兜や矢屏風に弓太刀、そして「萬歳」と書かれた屏風が出迎えてくれました。
坪庭の蹲から流れてくる水の音に耳を澄ませていると、「綺麗だな、と感じるお庭は、実は相当な手間がかかっているものなんですよ」と先生。
食事も季節のもの、鯛や赤飯などのめでたい趣向のものを、温かいものは温かく、冷たいものはひんやり舌触りも良く、それぞれが清楚に盛りつけられ、非常に正統派な京料理屋という印象を受けました。(またこの手のお店のお手洗いは広い!)
ところで、幸か不幸か、インターネットの急速な普及によって、お店に限らず物品や不動産関係、医療機関まで、あらゆるものが評価の対象として晒され、自分の財布を開かずとも、事前に口コミ評判を得られて当たり前となっています。
あるとき街角の飲食店で、食べ物がこびり付かないよう予め濡らしてある木の箸を、「お箸が濡れていて気持ちが悪いので交換して下さい」と言っていたり、「器に何かが付着している」と、金継ぎが施された器を指差している人を見かけたりすると、ネットの口コミとは書き手次第で左右される危ういものだな、と思わざるを得ません。
全ての評判を鵜呑みにする読み手は多くないでしょうが、「おもてなし」とは、至れり尽くせりの一方通行なサービスや評価の対象ではなく、双方の掛け合いでつくられていくもの。
通された部屋のしつらいや食材の取り合わせ、間合いの取り方にどんな気配りが巡らされているのか、目に見えないとこをも汲み取って、感謝の思いで返せるような良いお客になっていきたいですね。
言葉に代わり、お皿に乗せて伝えたいこと。このお食事会は、先生の課外授業だったのかもしれません。