金属で紡ぐ生命
3月22
写真を見た瞬間、是非とも行きたいと思った個展があります。
27日まで清課堂ギャラリーで開催中の「鈴木祥太金工展『循環』」。
錫器・金属工芸品の老舗・清課堂の離れにある茶室の陰に咲く、金属の花。
着色をしない金属の色みは、枯れたような、それでもまるで畳に根を張り、そこから生えてきたかの様な生命感があり、今にも綿帽子から離れようとする綿毛は実に精巧緻密で、思わず息を吹きかけたくなってしまいます。
金属は「人工のもの、無機質で冷たいもの」という一般的なイメージはすっかり覆されてしまいます。
水を吸い上げた花の瑞々しさや鮮やかさ、芳しさとは異なるけれども、辺りの空気を変えてしまう存在感は生花と同じ。
動植物の様に血管や道管があるわけでは無いけれど、確かに金属も、もとから地球上に存在する自然のものであり、錫や真鍮で形作られたこの蒲公英やあざみにも一筋の何かが流れているのではないかと思わせます。
人はなぜ、リアルに限り無く近づくことにこんなにも惹かれるのでしょうか。
作家本人もとても若い事に驚きでしたが、この先どんな花を咲かせてくれるのかが楽しみです。