隠れ老舗
2月23
寒い夜は、仲間内で肩寄せ合ってつつく水炊きが何よりのごちそう。今回は「本家鳥初」を利用しました。
河原町三条より一筋上がった細い姉小路通りを西に入った目立たないところにあるため、創業から120年は経つという歴史がありながら、「こんな店あるなんて知らなかった!」という声をよく聞きます。長年京都に住んでいても、たまにこんな隠れ老舗に出逢えるのです。
一筋入っただけで街の喧騒が遠のき、暖簾をくぐれば別世界、繁華街のど真ん中に居る事など忘れてしまいます。
まずは薬味としょうが汁を加えた白濁スープで身体を温めると、かじかんだ指先に感覚が戻っていく心地よいしびれ。
綺麗に盛られた白菜は、軽くしゃぶしゃぶして繊維感を楽しむも良し、乳白色のスープに漂わせてとろとろの食感を味わうも良し。
骨付きのかしわは程良い歯応えと香りを醸し、「スープが美味しい」「白菜が甘いね」と各卓から聞こえて来る声にも一安心。
広間や個室、離れもありますが、何だか一日観光を終えて旅館の一室に辿り着いたかのような風情があります。
スープをたっぷりと吸い込んだ雑炊をよそう中居さんの手元を見ながら熱燗を頂いていると、布団を敷いてもらいたいくらい。
帰り際に、暖簾の隙間から見える広い厨房の大きな釜にも、重ねられた歴史を感じました。
「古き良き京都」を思い起こさせる風情が、ここにはまだ残されています。