水原房次郎 蔵美術館
11月10
宇治市内に新たに「水原房次郎 蔵美術館」が開館したと聞いて、訪れてみました。
会場は、古くから製茶業を営んでいた旧家・藤川市左衛門邸の、もとは製茶の作業場だったという築300年近い土蔵を改装したもので、太い梁や藁の苆を散らした荒壁もそのままの風情を活かしてあり、数々の風景画とも溶け込んでいました。
福岡で生まれ、戦後は宇治にアトリエを構えて約50年を過ごし、画業ひと筋だったという洋画家・水原房次郎さんの作品は、地元や江ノ島、奈良等の国内の風景のみならず、欧州や南米を渡り歩いた軌跡で主に構成されていました。
一貫した作風というよりは、日本を出て遭遇した色や光、ステンドグラスの影響を受けながら、筆致や書き込み具合を変えてみたり、年齢を重ねる毎に意欲的に、大胆になっていくのが伝わってきます。
キャンバスの端に描かれた青空のパキッと突き抜ける様な爽快感、素早いタッチながら熟れて遠くに漏れている光をも映した描写が非常にリアルな柿の実…作品の一部は公式ホームページからも観る事はできますが、その色遣いや対象物の特徴を捕える巧さは、実際に間近で対峙しなければ知り得ません。
この蔵美術館のある宇治市白川付近は、主に玉露を生産する農家が点在しているそうで、京都府の茶業研究所もあります。観光客で賑わう宇治橋商店街の風情とは違う、京都の茶処としての地元色が表れた静かな趣きでした。
個人宅の敷地内にあり、期間限定の開館という事で、次回は春の公開までのお楽しみとなりそうです。