『熊野(ゆや)』と「地主桜」
3月4
世阿弥の娘婿・金春禅竹の作とも言われ、能を代表する曲の一つ『熊野(ゆや)』。
能楽金剛流宗家の長男・金剛龍謹さんによる「龍門之会」で初めて鑑賞しました。
故郷にいる母の病を案じながら、清水での花見の宴で舞い、勤めを果たす平宗盛の愛妾・熊野。
面はわずかにうつむき、心の曇りを写しだしているかのようです。
鼓の音が突然の村雨を表し、雨に打たれて散る桜を母の姿に重ね、扇で受けとめる情景が美しい。
翌日、『熊野』に登場する「地主桜」があるという地主神社に足を運んでみました。
清水の舞台の近くにあり、なおかつ縁結びのパワースポットとして人気の神社のため、若い女性や外国人旅行者で混み合う中で、
『熊野』の村雨降る感傷に浸る事は叶いませんでしたが、「えんむすび祈願さくら祭」でも謡曲「熊野」を聴く事ができるようです。
地主権現の、親と子の縁を結ぶ働きのためか、宗盛から帰郷の許しを得た熊野。無事に母の顔を見る事はできたのでしょうか。