e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

京丹後親子旅

8月30

yura 夏休みも後半になると、毎年両親、親族と共に丹後方面を旅行するのが恒例になっています。
京都盆地の中にいる京都人が、「海の京都」へと足と羽を伸ばすのです。

子連れ家族旅行となると、旅のメインはおのずと水遊びに。
今回は、各海水浴場にアクセスでき、プールもある「ホテル&リゾーツ京都宮津」に宿泊。
朝食や夕食はバイキングのみですが、ミニドーナツや自分で作る綿菓子等が子供達に好評で、
「また来年も泊まりたい」とリクエストされました。

ホテルから車20分弱の丹後由良海水浴場へ。
遠浅でのんびりとした風情は、子連れ向けかもしれません。
沖からの冷たい水流と、太陽で温められた海水の波が交互に気持ちよく身体を撫でていきます。

自分が子供の頃は背中の皮が剥ける程真っ黒に日焼けするのが夏の常でした。
今は若い女性もお洒落水着で体型カバー、子育て世代も帽子にサングラスにラッシュガードで紫外線対策ばっちりです。
水辺のファッションも時代を写す鏡ですね。

自分の父親も、祖父の仕事が落ち着く頃にあわせて丹後へ海水浴へ連れて行ってもらい、近くの宿に泊まっていたそう。
「親父にしてもらったことを、子や孫にもしてあげたい。」
同じ景色を観ていても、父の瞼には自身の子供の頃の懐かしい景色が映っていたかもしれません。
(※その他の京丹後スポットについては、「一言コラム」ページ右上の窓に「丹後」と入れて検索してみてくださいね)

2023年8月30日 | 観光スポット | No Comments »

清水寺から観た送り火は…

8月22

1000清水寺から五山の送り火が観える」。
一部のSNS等で話題になっていたので、観え方を検証すべく音羽山へ向かってみることにしました。
全てというわけではありませんが、幾つかは観えるらしいと。

「ここに日本人は居ないのでは?」と思う程に外国客で賑わう参道を登ります。

結果としては、比較的良い視力の裸眼では
「左大文字らしきものと、船形らしきものと、鳥居型らしきものが観えた」
という感じでした。
それぞれの送り火とかなり距離が離れているので、撮影にはかなりズームのきくカメラでないと厳しいと感じました。

しかしながら、千日参りも同時に参加できたので、日差しの和らいだ境内で風鈴の涼やかな音を聴きながら、
様々な国から集まった人々と手を合わせ、同じ方向を向いてすごす平和で穏やかな時間もいいものです。
これぞ清水の舞台に集う醍醐味なのかもしれませんね。

家族連れだったので長距離の坂道移動は困難とみて、五条坂と三年坂が交差する車両通行止めポイントまでタクシーで行き、
帰りもちょうど同様の場所で、千日参りが終わる時間までに間に合うよう乗り付けてきたタクシーに声をかけて乗車する事ができました。

能楽師の美しき陰影

8月9

ryumon 今年も金剛能楽堂の「龍門之会へ。
宗家長男の金剛龍謹氏が主催する会で、最初の仕舞はまだ年少さんの金剛宣之輔くん、続く舞囃子を8歳になったばかりの金剛宣之輔くん、仕舞を26世宗家・金剛永謹氏が担うなど、3世代にわたる共演を観ることができました。

舞台を踏み始め、人前でも堂々と、一生懸命に声を上げる宣之輔くん。
背後に親が控えているとは言え、舞台に立てば一人というプレッシャーを感じながらも凛々しく舞を見せる宣之輔くん、
今日までの鍛錬で鍛えられた声が舞台に響き渡るのが心地よく、すっかり安定感のある龍謹さん。
人間国宝として認定されたばかりの金剛永謹氏の所作には年月を重ねて枯れた風情すら感じさせます。

会を通して舞台の照明が変わったわけでもないのに、少年達の顔や衣装は眩しいほどに輝かしく、年を経るごとに陰影を帯び円熟味を増していく能楽師の一生を観るような景色でした。

後半の演目「殺生石」は、通常は後シテが狐の姿で演じられるのですが、金剛流古来の小書(特殊演出)「女体」として、玉藻前という高貴な女性の姿で舞われました。
狐の冠をかぶり、最後は舞台袖へと走り去るのですが、視界の狭い面に足袋を身に着けているとは思えない程の足の速さに、暫し終演後も茫然としてしまいました。

最近では友人の小学生の娘さんが金剛流の謡を習い始めました。
もとよりダンスが好きで、能の仕舞とも平行しながら夢中になって稽古しているとのこと。
冬の発表公演が今から楽しみです。

なお、毎年8月16日の五山送り火の日には、「大文字送り火能 ~蝋燭能~」が行われます。
金剛能楽堂の目前の京都御苑内から大文字の送り火を観ることができます。

「この景色」が撮りたくて

8月2

motomiya
伏見稲荷大社・本宮祭(宵宮祭)

京都の観光地や催しを撮影していると色々あります。

ベストな撮影場所を求めて、早朝から場所を取って待機していたのに、始まる直前になって報道陣が目の前に現れて視界が塞がれてしまったり、音を拾うためのテレビ局クルーのマイクが目の前に伸びてきて真正面に映り込んでしまったり。

早くから現地入りをして、「神聖な儀式の場だから」と少し遠慮して下がってカメラを構えていたら、後から来た背の高い外国人が前に入って来て長い腕でスマートフォンを掲げたまま動画撮影を始めてしまったり。

「ああ…」と思わず深いため息が出てしまうこともしばしば。
中には怒りを露わにして、前にいる人に向かって声を上げる人もいたりします。
「寺社は神聖な祈りの場なのだから、撮影スポットでは譲り合うべきだ」とネットで語る人もいました。

自分の中にもそんな感情が沸き上がりそうになる事もあります。でもそんなときは、
「分かる…!分かるけど…寺社は撮影をしに来る場所じゃないんだよなあ」
「ほら、フォトジェニックな景色を撮らんがために、仏神にすっかりお尻を向けて、お賽銭すらしていないじゃないか。」
と自分に言い聞かせて戒めています。

ガイドブックに掲載されているのと同じ景色を撮ることに、みんな必死。
でも、同じアングルの、似た画像が大量生産されるのってそんなに価値があるでしょうか?

エピソードよりも先に、SNSの画像から直感的に旅行先のプランを立てる傾向も主流になりつつあります。
自分の個人的なSNSでも、外国人の方から度々尋ねられることも出てきました。
撮影場所だけでなく+αの情報も添えて、文化的な背景も知って欲しいな、と願いながら返信をしています。

2023年8月02日 | 未分類 | No Comments »

杯を肴に酒に酔う

7月25

sake
祇園祭神幸祭の神輿も通る祇園・古門前。
祭の喧騒を離れ、日本酒バー「THE BAR-SAKE」へ。
美術茶道具商「中西松豊軒」の目利きで選りすぐられた酒器を肴に様々なお酒を楽しめるところ。

ホテル「ART MON ZEN KYOTO(アールモンゼン京都)」内の畳のカウンター「天外」は、堂本印象が長刀鉾の稚児社参を描いた掛け軸や、丸平・大木平蔵による長刀鉾や山伏山の精巧な模型人形が据えられ、祇園祭のしつらいになっていました。
御簾に囲まれ、一人ずつお膳が並べられているだけでテンションが上がります。
エレガントな金髪美女と入れ違いでしたが、以前このホテルに滞在された時に利用されたリピーターとのこと。

まず目の前に出されたのが、祇園さんの紋の入った酒杯と杯台。
「永楽即全です。」京焼の家元の一つであり、千家十職の一つと名高い、いきなり名器の登場です。
今回主に頂いたのは、 京都府「神蔵」、栃木県「鳳凰美田」や青森県「田酒」、灘のシェリー樽熟成特別原酒「絲 ito 」など。

様々な酒杯の中から好きな酒器を選びながら、亭主と話に花を咲かせます。
国宝茶碗で有名な油滴天目をミニチュアにしたような杯も、手にしたとたん底に吸い込まれそうでした。
食前酒のように甘いもの、スパークリングワインのような発砲酒、ウィスキー樽に漬け込んだお酒など、お酒に詳しくなくても変化が楽しめて、杯に少しずつ色んな種類を頂くので飲みやすく、悪酔いもしません。

予算は税サ込みで5000円ほど。
唐揚げとビールで飲めや歌えやの宴席も楽しいものですが、あらゆる「本物」が集う京都で酔うなら、
お酒にも、それを湛える酒器にも思いを馳せて頂くひと時も京都旅の醍醐味ではないでしょうか。
(ちなみに、気に入った器は購入も可能とか)
こちらは金曜日と土曜日の営業ですが、その他の曜日は要相談とのこと。いずれも予約をしてくださいね。

2023年7月25日 | お店, グルメ | No Comments »

コロナ禍で生まれた新しい神事

7月19

sinsen前祭宵山の間は、昨年より新たに始まった儀式「御神水交換式」を観るため神泉苑へ出向きました。

国宝の八坂神社本殿の地下には「龍穴」と呼ばれる池があるとされ、祇園祭の起源とされる869年の御霊会が行われた東寺真言宗寺院・神泉苑の池と繋がっているという伝承があることから、双方の境内の水を交換し、浄化した水を神事に使用するというもの。

神泉苑の善女龍王社の閼伽井で汲み上げた閼伽水と、 八坂神社本殿の御神水を、祝詞や加持祈祷で浄化、交換して持ち帰った水は「龍穴」に繋がる井戸に注がれ、「青龍神水」として疫病を鎮めんと、昨年から山鉾巡行や神輿渡御などでも取り入れられています。

昨年就任したばかりの八坂神社の宮司による提案で始まり、神泉苑の住職のほか東寺の執事長も参列したそうで、まさにコロナ禍で生まれた神仏習合の儀式です。

後祭でも山鉾巡行神輿の渡御は行われます。
お水が使われた場面に遭遇したら、ぜひご注目ください。

鴨川の水の神をお迎えする

7月12

omukae   毎年7月10日に行われる祇園祭神輿洗は、いつも黒山の人だかりになってしまうので、今回は少し高い場所から観てみることにしました。
ちなみに今年神輿を先導するお囃子列は、去年巡行に完全復活した鷹山です。

激しい通り雨も上がり、16時半に八阪神社の北側から出発したお迎え提灯の列は、西門前を通り、四条通りを華やかに彩りながら進んでいき、京都市役所前では子供達が鷺踊や小町踊を披露しました。

ようやく日が傾き始めた19時頃、南北に張られた斎竹(いみだけ)が揺れる四条大橋には、四条大橋を東へ戻ってきたお迎え提灯列と、八阪神社側からやって来た宮本組が出逢います。
夕暮れの川辺の景色の中に松明が立てられ、観光や買い物の客人達が行き交う雑踏に、なんとも言えない良い風情が漂い始めました。

暫くして両方の列は社の方へと引き、20時頃に今度は神輿を導きながら「宮の川」つまり鴨川の四条大橋へ。
その昔鴨川は「暴れ川」と呼ばれるほど、度々氾濫していました。
そこから疫病が蔓延するのを恐れ、鎮化を祈願し、28日には再び鴨川にお還しするのです。

複数に分けられた松明に守られながら、四若神輿会の中御座が差し上げられました。
鴨川の水が振り撒かれ、鴨川の水の神様を迎えた神輿は再び八坂のお社へと帰っていきました。

動画は後日こちらにアップしますね。

ただのコラボではない

7月5

kongou
金剛能楽堂では、装束の虫干しに合わせて「金剛家 能面・能装束展観」が毎年行われています。
今年は華道家・写真家である池坊専宗氏を迎えて能楽と華道についての鼎談が企画されました。

いけばなの成り立ちを遡ると、古来は神仏への供えもの。そこから真(本木)と下草で構成される「立て花(たてはな)」というスタイルが生まれ、もてなしの場に用いられるようになり、室町時代後期には「立花(りっか)」へと発展、
多種多様な草木を使って自然の景観美、更にはこの世の森羅万象を表現するようになります。

一方、『泰山府君』の桜等、能においても草花はよく演目に登場しますが、基本的には「作り物(造花)」が用いられ、最後は縁者も作り物も舞台からはけて「無」に戻ります。
内生(心の内に感情や考えが生じること)を生かす芸能なので、花は人の姿を投影されたものとされています。

平成3年、観世弥次郎長俊作の『花軍(はないくさ)』という珍しい演目が現代の金剛版として上演され、能舞台は池坊専好氏によるいけばなで装飾され、子方が菊や女郎花、仙翁花、牡丹の精を演じました。
(「花軍(いくさ)」という言葉を聞いて、つい、5年前に野村萬斎さんが演じた映画「花戦さ」を思い出していました)

一見「華やかなコラボレーション」という印象になるでしょうが、同時代に発展し、「花」への捉え方が異なる芸能同士が共存しているという背景を思うと、また観方が変わるかもしれませんね。

草花で染められた能衣装は、化学染料とは違い、時を経て色褪せていきます。
特に赤い染料のものは黄色になり、周囲の文様と馴染んでいきます。この枯れて調和ができていく過程も、能の世界では良しとされています。

鼎談そのものはまるで室町オタク同士の雑談を聞いているかのようなマニアックな盛り上がりでしたが、「国際化が進む日本において、自国の事をよく知ることが本当の国際化である」との提言で締めくくられました。

闘うこどもたち

6月28

hariken 大型連休中に高台寺の忍者イベントでPRしていた『忍風戦隊ハリケンジャー』テレビ放送20周年記念の映画を、子供達と観に行ってきました。
子供向けとはいえ、時代も舞台も「お江戸」という「時代劇」なのですが、東映・京都撮影所によって京都でロケが行われています。

我が親子にとっては観た事のなかった時代の戦隊シリーズにも関わらず、高台寺公園でのタッチ会と映画の影響か、以来、家の近所を歩く度に石塀をよじ登り、垣根をそろそろと渡り、我が家の小さな忍者たちは移動の合間も忙しくしています。

冒頭から萬福寺を舞台にチャンバラが繰り広げられ、思わず
「こないだみんなで遊びに行ったお寺だよ」を耳元で教えたくなりました。
拝観者が足を踏み入れる事の無い白砂の上でも迫力のアクションです。
大スクリーンに耐えうる臨場感は、やはりセットとは大違いですね。

大江戸の町はおそらく太秦映画村でしょうか、屋根瓦を縦横無尽に飛び回るのは忍者戦隊ものならでは。
水上を駆け抜ける水蜘蛛の術も出てきます。
主人公が最終形態に変身した姿は、所作もまるで歌舞伎役者。
面白いけど、子供ウケは…?と気になりましたが、「かっこよかった」そうです。

その後、ふとSNSに流れてきた言葉にはっとしました。
映画の感想を書いた内容ではありませんでしたが、近頃仮面ライダーが大人向けの映画になったり、
ディズニーの過去の名作が実写化されるのをよく見かけるのは、もしかしたら
親世代を巻き込まないといけないほど、少子化による市場の縮小の影響が如実に現れてきているのではないか、というものでした。
少子高齢化の影響は、あらゆる業界にとっても他人事ではありません。

今日も模擬刀を手に、目に見えない架空の敵と戦う我が子たち。
子供達が成長した次の時代は一体どうなっているのだろう、困難に向かって一緒に戦える仲間は十分にいるのだろうか、とその姿を眺めています。

美術館に泊まる。「純国産」ホテル

6月21

tengai 古美術商の立ち並ぶ祇園・古門前に、美術茶道具商「中西松豊軒」が監修するホテル「ART MON ZEN KYOTO(アールモンゼン京都)」があります。

足を踏み入れると、御簾に囲まれた畳敷きの「天外」という、このホテルを象徴するかのようなスペースが目に入り、館内は美術商の審美眼によって選び抜かれた国内外の美術品が随所に散りばめられている事に気付きます。

まるで美術館に泊まるかのような趣向。
美術品は飾って眺めるためだけのもはありません。自分の皮膚と対話させてこそ良さが伝わるものもあります。
「和風ラグジュアリー」を謳うホテルは数あれど、日本が誇る「本物に触れられる」純国産のホテルと言えます。

全ての客室が天井高3メートル以上とゆったりとした設計で、
数寄屋の趣は好きだけど、旅館スタイルでは落ち着かないという外国客にもおすすめできますね。

ちなみに、この「天外」スペースでは、金曜日と土曜日は「THE BAR-SAKE」として営業中。
(※ご利用の際には電話にてご確認ください)
ここでしか手にできない骨董の漆器・焼物・ガラスなどの酒器で頂くお酒は、どんな口あたりなのでしょうね。
ぜひ行ってみたくなったので、またレポートしますね。

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