e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

京都の端っこに行ってみる

11月16

otowa 今年の秋になったら、訪れてみたい紅葉の穴場がありました。
テレビドラマ『ちょこっと京都に住んでみた。』のロケ地として初めて知った、音羽川沿いに作られた砂防学習ゾーンです。
音羽川に沿って自転車で(実際に乗ったのは電動アシスト付きでしたが)進み、今年のお正月に訪れた虎年ゆかりの道入寺の前を通り、小さなベンチのある御安堂公園を越えると細い砂利道に変わります。殆ど人と行き交う事もなくしばらく進むと雲母橋に着くまでに車止めがあり、更に進むと目の前に大きな階段が。脇の空き地にはバイクやママチャリが停めてありました。

階段の向こう側に見えている赤、青、黄色の紅葉に気持ちも高揚させながら階段を登り切ると、小さな砂防ダムからの水音の流れる沈砂地が広がっていました。
このダムの横を通り過ぎると、更に広い中州のある草原に出ました。
大きな砂防ダムから水が滝のように勢いよく落ち、周辺をまだ色付く前の青紅葉が囲んでいます。

先ほどの自転車の持ち主でしょうか、親子連れがピクニックを楽しんでいたようで、渡り石では男の子が水を汲んで遊んでいました。
他に人はいなくて、草原に大の字に寝転んだ母子が「あ~気持ちええわ…。」と呟いていました。
この先にはボードウォークや石積堰堤があるそうですが、時間が無く次回へのお楽しみとしておきました。
もうじき辺りの紅葉が赤く染まって、水音だけが響く静かな錦模様が期待できるかもしれません。

修学院駅からのスタートだと、ここまででおよそ15分程でしょうか。
「自転車ではちょっと…」という人には、タクシーで「関西セミナーハウス」の前まで行き、そこから川の方へ向かえば近道になります。
すぐ近くに曼殊院もあり、門跡寺院ならではの佇まいと庭園、周辺の紅葉もとても美しいので、ぜひお立ち寄りください。
動画はまた後日に。

2022年11月16日 | お寺 | No Comments »

祇園で気軽に

11月7

irodori
夜の祇園。「どこで食べよ?」
友人が連れて行ってくれたのが建仁寺の近く、大和大路を下がり団栗通りを東に入ったところにある「京おばんざい・串揚げ 彩り」でした。
女性一人でも入りやすく、祇園でもお手頃なお店です。
店主の趣味か、店内はずっとミスチルの曲がかかっていて肩肘張らない雰囲気。

飲み物の種類も豊富で、日本酒のリストの中から、飲みやすいものをウエイターさんに尋ねると、「甘口ですか?辛口がいいですか?それならこちらは…」とテンポよくオーダーが決まります。
他のお客の皿をきびきびと運ぶ合間に、悪酔い防止の和らぎ水も持ってきてくれる自然な気配りも嬉しい。
当たり前のことですが、「愛想のいい接客」は誰にでもできるもので、それがお客への思いやりとお店への愛着、商品知識がベースになっていると「気持ちのよい接客」になります。
再び国内外から京都の風情を求めて人が訪れる観光地には、その様なお店が残っていって欲しいと願います。

きめの細かい衣に包まれカラっときれいなキツネ色に揚がった筍や茄子、焼き鳥などを、お酒をちびちび呑みながら少しずつ。
「空いてますか~?」としょっしゅう戸を開ける人がいて、また観光地の中にありながら、行列ができるという訳でもない、程良い人気ぶりでした。
公式Instagramにも「お一人様から御家族、0歳の赤ちゃんも」とのこと。
呑む人も呑まない人も、祇園で誰でも安心して立ち寄れるお店ですね。

2022年11月07日 | お店, グルメ | No Comments »

余白に込められたもの

11月2

fujin 友人に誘われて夜の人気もまばらな建仁寺へ。
キヤノン株式会社主催の夜間特別拝観・映像体験イベント「ヨルZEN(禅)-自然と共生する日本-」が10月末まで開催されていたのです。
広くは告知されていなかったようで、その友人もまた祇園界隈に勤める知人のSNSで知ったのだとか。

本坊に入ると、遊園地のアトラクションか!?と連想してしまうような轟が床から響いてきました。
綴プロジェクト」によって昨年奉納されたという、国宝『風神雷神図屏風』の高精細複製品に投影されたプロジェクションマッピングがその正体。
雷鳴や風雨、黄金色に輝く稲穂が周囲にも映し出され、農耕を支配する雷や風などの自然に神仏が宿ると信じて来た日本人の信仰がこの屏風に描かれている事を再認識させます。

方丈へと進むと、専用ゴーグルを装着。
目の前に広がる枯山水「大雄苑」に、MR(複合現実)による映像が現れ、最後に墨の様な黒い粒が白砂の上の空間に結集し、まるで墨蹟の様に空中に浮かび上がる様は圧巻でした。
法堂ではスマートフォンやタブレットを通して、天井の「双竜図」を眺めてみると、AR(拡張現実)によって、龍たちが天井を抜け出し、より近づいてその姿を眺める事ができました。

この様な映像技術はこれからますますあらゆる場面で見かける事になり、次世代を担う子供達にとっては当たり前のものとなっていくのでしょう。
それぞれ楽しませてもらったのの、個人的には、日本の美意識の一つである「余白」を目に見える形にして埋めてしまうのはどうなのか、と少々危惧してしまうのです。
だからこそ、これまでは「風神雷神のユニークな姿」という印象しか持っていなかった屏風に、今回の仕掛けによって日本人の信仰の形を見出したように、
オリジナルが何を訴えようとしているのか、と自分で改めて想像力を働かせる意識を持ちたいと思います。

本番前の時代祭

10月25

anzai
時代祭の時代行列は例年正午に御所の建礼門前より進発しますが、今年こそは出発前の様子を見てみたいと思い、朝の平安神宮へ。
8時より2基の鳳輦に御霊代を遷す神幸祭が行われており、既にそこそこの人だかりができていました。
本番だと静々と進む御鳳輦がなんとも京都的ですが、應天門を多人数で担がれながらそろそろと潜り抜け、台座にやっとこさ仮座される際は珍しく「わっしょい」な風情でした。
9時になると、これという合図は無いものの、神幸列が平安神宮の大鳥居に向けて進行を始め、演奏しながら歩く雅楽隊や幟を持つ人々、歴史人物たちはそれぞれのルートで京都御苑を目指していきました。
付近からシェアサイクルに乗って京都御所・建礼門前の行在所へ。
京都料理組合による神饌物の奉献、白川女による献花、関係者が榊を納めたり、維新勤王隊列が京都御苑を出発する前と、平安神宮に到着した時だけ演奏するという「朱雀行進曲」も。
少し離れたところで待機していた徳川城使上洛列の奴(やっこ)たちは、待機場所から行在所へ向かう際にも独特の掛け声を出していたので、次回は御苑での裏舞台の様子も観てみたい!

ところで、神社で風が吹いたり、蝶々が飛んでいるのを見かけたりすると、「神様が喜んでいる。歓迎してくれている」という話を聞いた事があるのですが、ちょうど行在所祭の最中に、2匹の黄色い蝶々が目の前を横切って行ったのです。
時代祭は平安京の最初と最後の天皇を祭神として、その二柱の神々に現在の京都の様子を見てもらうためのお祭。
3年ぶりに斎行された時代行列を、お二方が喜んでおられたのでしょうか。

2022年の時代祭関連動画はこちら

駅の喧騒から離れて楽しむお茶

10月18


aotake

京都駅からそう遠くない距離感、落ち着いた風情でゆっくりとお茶を飲みたい。
そんなお店がありました。
京都駅から北東へ徒歩約8分の「aotake」です。

京都に古くから住む人の家を訪ねるように狭い玄関に入り、引き戸を開けて中へ。
22年に農林水産大臣賞玉露の部で受賞した京田辺市の茶園の手摘みの宇治玉露などの日本茶や中国茶など、四季折々の厳選された美味しいお茶やタルトを頂くことができます。
気軽に手に入るスナック菓子なら、家の冷蔵庫から出したお茶やジュースで流し込むようにぺろっと食べてしまいますが、旬の果物がぎゅっと詰まっていて手間暇かけて作られた食べ応えのあるお菓子には、それに見合った飲み応えのあるお茶や器がやはり合うような気がします。

2階の座敷では、お茶会や日本茶の淹れ方のプライベートレッスン、古建具活用講座などこれまで様々な催しがされてきたようです。
その中で「ふて゛文字教室」に興味があったので、参加してみる事にしました(詳細はまた後日)。

お店の隣の古民家前には「七条仏所跡」の駒札があり、近隣には紅葉さんぽが楽しめて煎茶道にゆかりのある渉成園もあります。
席数に限りがあるので、4名以上での利用の場合には、事前に連絡を入れることをおすすめします。

羽を広げて風に乗ろう

10月12

cho
今年の夏より一般拝観を始めたお寺があります。
これまで何度となく本法寺の境内を歩きましたが、その一角にある尊陽院という塔頭には気づきませんでした。
訪れたきっかけは、SNSで流れて来た、アサギマダラを描いた鮮やかな天井画でした。

朽ちた空き寺だったところを手探りで再興、住職の妻も修行の末に尼僧となり、自身の辛い経験から水子供養を主とする祈りの場として生まれ変わったそうです。
このアマギマダラの天井画を制作したのはmais(マイス)という若き芸術家。音が色で見えるという共感覚を持っているそうです。
墨一色の龍の天井画とは対照的に、彼女の瞳を通すと、世界はこのように色鮮やかに見えたりするのでしょうか。

草花を描いた天井はよくありますが、こちらは蜜を吸いに来る側の蝶。
それも、ひらひらと可憐な、というよりも羽を大きく広げた力強い印象の方が優ります。
浅葱色の羽が美しいアサギマダラは、日本から海を渡り香港まで移動できる程の珍しい蝶でもあります。
アートは目にした人の数だけ解釈があると思いますが、自ら動いて幸せを取りに行くような、風に向かってしなやかに飛び立とうとする女性を象徴しているかのように思えました。

お寺の復興から天井画の完成に至る不思議な物語は、拝観時に教えて頂けますよ。

「おもろいおっちゃん」に会いに

10月3

issey 先日、父が楽しみにしているという、『イッセー尾形の一人芝居「妄ソー劇場」』を観に京都府立文化芸術会館を訪れました。
早速イッセーさんが描いたイラスト入りのTシャツを購入。

自分にとって初めてイッセー尾形という人物を認識したのは、阪神淡路大震災の際に延々と流れていたACのコマーシャルだったので、
以来、俳優やナレーターとしての活躍をテレビの画面を通してみてきました。

開演前のアナウンスもご本人のもの。思わずくすりと笑わせてくれます。
人間観察を笑いに昇華させた小劇と小劇の合間には、暗転する舞台の端だけスポットライトが当たり、イッセーさんがその場の姿見と観客の前で衣装替えするのです。
ドーランを塗り、もみあげもヘアマスカラでしゅしゅっと染めて、紅をひく表情も仕事人そのもの。
再び舞台の真ん中に戻ったかと思えば、よく通る最初の一声で観客を湧かせます。

会場に集まっているお客は年齢層が高めでリピーターが多い様子。
世代の違いか、ネタによっては内容がよく分からないまま周囲の爆笑に戸惑いました。
しかしながら、テレビのナレーションにおいても、声を聞いただけでその飄逸なキャラクターを連想させ、
自分の芸名を冠した、しかも一人芝居で何年もファンを魅了し続けているというのは脅威的なことです。
今回初めて実際に本人を観ましたが、こういう劇場公演なら演劇人としてもっと色んな側面を観る事ができそうです。

ホールを出ると、3年ぶりに行われるというサイン会を心待ちにする人々の長蛇の列が既にできていました。
あの笑顔を前にすれば、きっとつられて笑ってしまい元気が出るでしょうね。
イッセー尾形さんが「世界で一番好きな劇場」と呼ぶ京都府立文化芸術会館での次回の公演は、来年3月を予定されているそうですよ。

自然の中から見出されるもの

9月27

bonsai

大徳寺山内の最北にある塔頭・芳春院

現在、伽藍内の拝観はありませんが、2021年より盆栽庭園を開園しています。
看板は立ててあるものの、よっぽど近づかないと気づかないくらい。

受付で目録を受け取り、お庭を一周するように配置された作品の前で立ち止まっては覗き込んだり離れて眺めたり。

大陸から伝わったとされる盆栽は、「自然の中のどこにでもある仏性」の象(かたち)として創作されたものだそうです。
水石(すいせき)とは「山水景情石」の略称で、石を鑑賞する文化のこと。日本古来から伝わるものだとか。

なんの知識も持ち合わせてはいないのですが、盆栽を観るのは好きです。
自然のもたらす曲線美と人の手が加わった力強さが、ルネサンス彫刻を観ているときのような気持ちになるのです。
誰もいない庭園の中で床几に腰掛けていると、お彼岸の涼しい風に、鳥のさえずりと遠くから木魚のやわらかい音が載ってきました。

春には桜の作品が置かれ、庭園内の紅葉の木の麓に立てば、開けた空の向うに比叡山も見渡せるので、
これまで訪れてきた寺社とは違う趣のお花見や紅葉狩りができそうです。

有名な戦後武将や茶人、座禅に禅庭、精進料理、月釜。
禅やサムライに興味のある人にとって、大徳寺は見どころの宝庫。
いつ訪れても外国の方がぽつり、ぽつりと歩いています。
きっとこの盆栽庭園もこれから注目されるはず。教えて差し上げたい!

料金比較サイト初体験

9月22

ms
わざわざ京都市内のホテルや旅館に泊まるという機会が余り無いのですが、最近は高級ホテルが京都市内ににょきにょきと生え続け、お寺が運営する宿坊からコンドミニアム、町家の一棟貸し等、本当に選択肢が広がり、また競争も激しくなってきました。

あるとき京都市内で一泊することになり、ネットサーフィンで色んな宿と地図を交互に見るのを楽しんでいました。
すると、CMでよく耳にする「料金比較サイト」の数々が一斉に料金を表示してきます。
ものは試しと、当時その中でも最安のタイムセール中だった「agoda(アゴダ)」で恐る恐る予約してみることに。

今回宿泊してみたのは、「ホテルエムズエスト 七条」。
宿泊税は家族合わせて400円でしたが、一つ上のランクのお部屋が開いているとのことで、料金そのままでアップグレードして頂きました。
部屋も新しくてとってもきれい。写真を撮ろうとしたら、既に子供達がベッドの上で興奮気味に走り回っていました。
レストランはありませんが、持ち込んで飲食できるスペースが1階にあり、ホテル周辺にもコンビニやファーストフード店、和食やビーガン料理店等が点在しています。
客層も、若いカップルから家族連れ、外国人の方もおられました。
昼間は外出しっ放しで殆ど「風呂と寝る」だけの利用だったので、十分満足でした。

予約はクレジット決済にしていたので、鍵を渡すだけで追加料金も無くあっさりチェクアウト。
こんなに安いなんて、もしかして一人当たりの料金だったのでは…と最後まで疑いながら出て、後日クレジットカードの明細を見ました。
大人2名(子供は添い寝で0人扱い)で2,895円でした。そ、それでいいのか本当に…!?

2022年9月22日 | 町家 | No Comments »

宮津の海鮮グルメ

9月13

kane
天橋立が国内初の名勝に指定されてから2022年で100年。
しつこく丹後ネタを引っ張りますが、宿から徒歩で行けるお食事処もご紹介しておきますね。
旅に「食」は付きもの。お付き合いください。

夕食は宿のオーナーからの口コミで、七輪焼きと丹後の旬の一刻干し「カネマス」へ。
2階のお座敷を家族水入らずの貸し切りで利用させて頂きました。

保存のためではなく、魚本来の旨味を凝縮させるため、限りなく生に近く薄味に仕上げられた一夜干しです。
海鮮ならたくさん食べても罪悪感無し!子供達には香ばしく焼いたイカが人気でした。
食材も調味料もその土地のものにこだわり、「こどもピーマン」など野菜も色鮮やかで新鮮。締めは味噌を塗った焼きおにぎりでした。
女性杜氏が造られたという赤い日本酒「伊根満開」はまるで食前酒のように甘いので、お酒を初めて飲む人にも飲みやすいかもしれません。

翌朝は、「海味鮮やま鮮」で海鮮モーニング。
焼魚に煮魚、刺身…どれをメインに選ぶか悩むのが旅の贅沢。
卵かけご飯の白身は、ふわふわのメレンゲ状でした。
花街の町家のような外観で、上階はお稽古事に使われているようです。
向かいは、店主が現役レスラーという「プロレスバー」でした。

魚市もあるこの近辺は、京都市内の観光地の様に土産物屋が乱立するでもなく、地元の住居と溶け合う程良い観光地化が好感持てました。

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