e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

背割堤と新たな計画

3月29

sewari 京都と大阪の間、石清水八幡宮のある男山と天王山に挟まれ、木津川と宇治川と桂川が出逢う背割堤は、すっかり桜の名所となりました。
展望台ができる前と比べて観光地化が進んだ印象ですが、それだけ老若男女が共に楽しめるということです。

「背割堤さくらまつり」の期間中、桜のトンネルから途中階段で南岸へと降りると、そこは屋台が建ち並ぶグルメストリート。
レジャーシートやテントさえ持参すれば気軽にお花見ができます。
本格的なキッチンカーも多数なので、味のレベルも期待できますよ!
「お花見船Eボ-ト」も運行しています。
反対の北岸へ降りると、ひらひらと桜の花びらが舞う静かな小径。まつりの熱気と日差しで火照った身体を、木陰でクールダウンできます。

ところで、2025年の大阪・関西万博を見据えて、淀川舟運を活性化しようと、水深が浅い大阪府枚方市からこの背割堤付近まで川底を掘削して航路を確保する構想が上がっているそうです。更に上流の伏見港まで中型船を運航させることも視野に入れた、京都市、宇治市、八幡市、枚方市の4市と国土交通省がタッグを組む「かわまちづくり計画」です。

かつては坂本龍馬や伊藤若冲も船便で京都~大阪間を移動していました。
三川が合流する背割堤は治水のために生まれたものですが、今後この計画への安全と環境への配慮がクリアされたとしたら、わくわくしてきますね!

花より団子か、団子より花か。

3月22

iori 例年よりも1週間以上も開花が早く、慌ててお花見の計画を立てた人も多いのではないでしょうか。

梅・桃・桜が一度に楽しめる京都御苑を去年の今頃に訪れた時にはまだ工事中だった「SASAYAIORI+」を目指して自転車を走らせました。
壁一面の窓から桜の木々が眺められる休憩所だからです。

カウンターで注文をする前に席を確保する必要があります。
ぜひとも窓側の席を…と、見回していると、ちょうど席を立つ方の後ろで待機して、無事窓際に着席できました。
画像は17日(金)時点での桜の様子なので、今週は更にゴージャスな景色が望めることでしょう。

どら焼きにも惹かれたけど、ここは素朴なみたらし団子とほうじ茶で。
食べるのに忙しくならないシンプルなメニューの方が、花を愛でる時間には向いているような。

桜の名所や美しい場所は全国どこにでも、家の近所でもあるものですが、この近衛邸宅跡の桜のように、雅やかな風情は京都ならではのような気がします。

月あかり 梅あかり

3月8

kitano 日増しに陽が長くなってきました。
まだ沈まない太陽が、空を昼から夜へと美しいグラデーションを描く薄明の時間が好きです。

見頃を迎えた北野天満宮の梅苑は、19日までの週末にライトアップが行われています。
夜間は昨年整備された「花の庭」のみの公開ですが、昼間よりは比較的人が少ないかもしれません。

お馴染みの梅こぶ茶が頂ける茶店の前に庭が広がっているので、こぼれ落ちそうなしだれ梅もゆっくり腰掛けて眺められます。
まだ白木の特設舞台に上がれば、赤、白、ピンク色の梅であふれた苑内を一望することもできます。
片側がスロープになっているので、階段が登れない人でも上がれるのではないでしょうか。

本殿の裏は更に人もまばらで、闇に溶け込む紅白の梅はもちろんですが、こちらのエリアでは社殿とやわらかな灯りの優美さの方に軍配が上がりました。

とにかく「映える」景色が撮れること間違いなし!
屋台はほぼ出ていなかったので、お食事は拝観前後に済まされることをおすすめします。

己の光を指針に

2月22


yo
友人に誘われ、高台寺の夜の茶会「夜咄」へ初参加。
寒さの厳しい季節に、陽が落ちてから開かれる夜咄は、暗い茶室の燭台の灯りだけで楽しむ趣向の茶会です。

一席辺り20~30名程でしょうか、先のグループが席入りしている間に、お坊さんが仏教の小話をして下さいました。
茶会の後は、広大な庭園内を登ったり降りたりしながら案内してもらいます。水鏡と化して木々を映す臥竜池を静かに眺められるのは夜の高台寺茶会ならでは。

境内を離れ、向かいの湯葉料理の「高台寺御用達 京料理 高台寺 羽柴」で点心席。
特別メニューの「うずみ豆腐粥」は、禅宗の修行僧が修業明けの真夜中に暖を取るために食するものだそう。
厳しい修行の最後の日に出されるとあっては、五臓六腑に染み渡ることでしょう。
人気観光地の高台寺ですが、僧堂としての姿を思い起こさせる、この催しならではのお品書きでした。

どなたでも、お一人でも、洋装でも、肩肘張らずに参加できる茶席です(懐紙と黒文字の用意もあります。撮影も可)。
誘ってくれた友人達が、お茶を習った事は無くてもお茶会に行ってみたい、一緒に行こう、と言ってくれるのは嬉しいこと。
隣り合わせた単身の方もその様なご様子でしたが、政所窯の茶盌やお道具などに都度肩寄せ合ってお話しながら、一緒に楽しくお茶を楽しませて頂きました。

「変わらず」時を刻み続けるという価値

2月8


sanmon
(※画像の金毛閣は現在修復工事中です)

大徳寺三玄院特別公開されています。
普段は非公開の塔頭ですが、閉ざされた門前を通る度に、個人的な思い出が甦ります。もう何年も前に、ある雑誌の記事広告撮影の裏方をお手伝いさせて頂きました。
記事の内容は、スイスの高級時計ブランド「オメガ」と、そのイメージキャラクターとしてスーパーモデルのシンディ・クロフォードさんと当時の競泳選手・千葉すずさんが、三玄院を訪れるというものでした。
記憶が正しければ、お茶席に入るときは時計を外して…と、手首のオメガの時計がアップで写るといった趣向だったように思います。
ゴージャスなイメージのシンディさんはとても華奢な身体をしていて、千葉すずさんは色白でスラッと背が高く、お二人とも美しい女性でした。

三玄院は、石田三成や古田織部の菩提寺だけに、誰もが知る多くの武将や貴人が参禅し、戦国の時代でもまたその時を象徴する人々を呼ぶ空間であったようです。
江戸期の絵師・原在中が各室ごとに技法を変えながらぐるりと襖絵を描き、絵師としてもこの上無い誉だったかもしれません。

拝観の後、ここの方丈前でその広告撮影の際に撮った記念写真を(※特別公開中の撮影は禁止です)見返してみてみました。
これまでもこれからもきっとずっと変わらず時を刻み続けていくのでしょうね。

向かい風に跳ぶ

1月25

hikou 石清水八幡宮をお参りした後、ケーブルを下車してから徒歩4分ほどで、航空安全と航空事業の発展を願う飛行神社という、ユニークな神社に辿り着きます。
ギリシャ神殿のような拝殿の蒼いステンドグラスにはトビウオが羽ばたき、現在放送中の朝ドラでは、主人公が航空の専門学校を受験する際にこちらの合格守りが登場しました。

大正4年に自邸内に私財を投じて創建したのが、飛行原理を発見し「カラス型飛行器」で飛行に成功した二宮忠八氏。
人の乗れる「玉虫型飛行器」を考案するも日清戦争勃発のため出兵、軍での飛行実験も却下されてしまいました。
資金を集めながら自力で研究を進めるも、明治36年にアメリカのライト兄弟が飛行機を完成し飛行に成功した事を知り、忠八は無念の涙を流しハンマーで製作中の飛行器を壊したといいます。

時勢と国の支援不足によって大きな契機を失う。
我が国が何度も直面してきたはずの問題です。

一方、資料館前には、操縦桿を操作しながら空の走行を楽しめるシュミレーターゲーム機が。
おそらく玄人向きゲームなのでどう操作していいのか分からず何度も海へドボン。
館内はおびただしい数の飛行機やロケット、ドローンの模型や、その関連の品が待機中です。
戦時中の痛ましい記憶も例外ではありません。

飛行機があしらわれたお守りは我が子へ。
海外にルーツのあるおともだちの分も受けました。

奇しくも海外で飛行機事故が報じられた時候。
今後おともだちが祖父母に会うため空を渡るときにも、守ってくださいますように。

石清水八幡宮の小正月

1月18

8man 先日は小正月だったので、家の松飾りを外して石清水八幡宮へ納めに行くことにしました。
いつもなら氏神さんに持って行くところですが、今回は石清水八幡宮参道ケーブルに乗ることも目的の一つ。
狙い通り子供達は大喜び。太いワイヤーでゆっくりと山の傾斜を登る様を大きな窓から観るため、行き交う車両のどちらの車掌台周りもたくさんのちびっこでいっぱい。

下車後もしばらく山中を歩いたので、境内の茶店で虫養いしてからお詣り。
参拝者が携える八幡御神矢の白羽が清々しく、再びお正月気分が高揚します。
ご祈祷の度に、神楽を舞う巫女さんはくるくるくるくると忙しく回転中。お疲れさまでございます。
本殿前にも巨大な御神矢がそびえ立つのが恒例の光景、お神酒の樽群の中にはウイスキー樽も。

国宝の社殿なども見どころなのですが、境内に点在する楠木正成の楠といった大木の幹や根の荒々しい造形に心惹かれました。
注連縄が貼られた樹の肌に手をそっと手を当てていると、あちこちの樹皮の隙間に硬貨が挟まっているのに気が付きました。
参拝者が願いを込めての行為なのかもしれませんが、ご神木を人間に例えて見てみたら、なんとも痛々しい気持ちにならないでしょうか。

最後はお善哉を食べて身体を温め、厄除けの念押しとしました。
1月29日には鬼やらい神事、2月1日には湯立神事も行われます。

うさぎの宇治で年明け

12月28

manpuku 萬福寺にて『黄檗ランタンフェスティバル』が2023年の1月末まで開催されています。
訪れた時は平日の晩だったので、境内も駐車場もとても空いていました。
小籠包や綿菓子などの軽食やキラキラ小物を販売する屋台と即席の座席、日本の縁日とはひと味違うちょい派手な遊具もご愛敬。

中国風のBGMと赤、黄、紫…のカラフルなランタンに溢れた境内を回遊していると、時折色の無い光と闇だけで浮かび上がる伽藍を抜ける瞬間もあり、本来の禅宗寺院としての厳かさが際立ちます。

昼間訪れた人は「中華街みたいだった」そうですよ。
年が明けて華やかな新春風情を楽しむのもいいかもしれませんね。(動画はこちら)

さて、年末の大河ドラマ最終回で承久の乱の地の一つとして記憶に新しい「宇治」。
宇治神社には、祭神「菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)」が河内の国からこの地に向かう道中を一羽の兎が振り返りながら導いたという故事にちなんでうさぎをモチーフにした授与品があります。
世界遺産宇治上神社にも「うさぎおみくじ」があるのだとか。

朝は卯年のお参り、昼は宇治茶を楽しみ、夜は萬福寺でそぞろ歩きと、そんな新年のスタートを宇治でを切るのはいかがでしょうか。

出張撮影カメラマンチーム

11月30

amico ぼちぼち観光地でも外国人の方がカメラマンと共に記念撮影をする姿が再び見られるようになってきました。
四季がある日本では紅葉の美しい場所は各地にありますが、それでも京都を撮影地に選ぶのは、背景に映える歴史的・文化的建造物があることが大きいかもしれません。

実は、先日の七五三には後日談があります。
ネットのスキルシェアサービス経由で依頼をしていた出張カメラマンが当月になって手違いで来れなくなってしまい、困り果てていたところを知人から口コミ情報をもらいました。
amico」という関西の出張撮影カメラマンのチームです。
ダメもとで公式LINEに問い合わせしてみるとすぐに返信があり、こちらが急を要していたためやり取りは深夜に及びましたが話はサクサクと進み、繁忙期にも関わらずなんと翌日には奇跡的に出張カメラマンを手配する事ができました。

料金は1時間で2万円(必要に応じて要交通費・データ郵送費)で、目つぶりやミスショット等を除き、明るさ等を調整の上で100枚以上を約1~2週間以内に納品(ギガファイル便での納品は無料)、事前ヒアリングで希望のショットも相談できました。
(※前回のコラムで使用した画像は素人撮影のものです)

余分なオプションの無いシンプルな内容と、自前の衣裳で臨場感ある光景を残したかった我が家にとってはありがたいサービスでした。

もちろん、フォトスタジオを利用して思い切り変身を楽しむのもいい思い出だと思います。
写真館で襟を正して撮影した家族写真も、毎年年賀状で見る度にその家族の変化を知る事ができていいものです。
今回は、こんなサービスもあるよ、というお話です。

余白に込められたもの

11月2

fujin 友人に誘われて夜の人気もまばらな建仁寺へ。
キヤノン株式会社主催の夜間特別拝観・映像体験イベント「ヨルZEN(禅)-自然と共生する日本-」が10月末まで開催されていたのです。
広くは告知されていなかったようで、その友人もまた祇園界隈に勤める知人のSNSで知ったのだとか。

本坊に入ると、遊園地のアトラクションか!?と連想してしまうような轟が床から響いてきました。
綴プロジェクト」によって昨年奉納されたという、国宝『風神雷神図屏風』の高精細複製品に投影されたプロジェクションマッピングがその正体。
雷鳴や風雨、黄金色に輝く稲穂が周囲にも映し出され、農耕を支配する雷や風などの自然に神仏が宿ると信じて来た日本人の信仰がこの屏風に描かれている事を再認識させます。

方丈へと進むと、専用ゴーグルを装着。
目の前に広がる枯山水「大雄苑」に、MR(複合現実)による映像が現れ、最後に墨の様な黒い粒が白砂の上の空間に結集し、まるで墨蹟の様に空中に浮かび上がる様は圧巻でした。
法堂ではスマートフォンやタブレットを通して、天井の「双竜図」を眺めてみると、AR(拡張現実)によって、龍たちが天井を抜け出し、より近づいてその姿を眺める事ができました。

この様な映像技術はこれからますますあらゆる場面で見かける事になり、次世代を担う子供達にとっては当たり前のものとなっていくのでしょう。
それぞれ楽しませてもらったのの、個人的には、日本の美意識の一つである「余白」を目に見える形にして埋めてしまうのはどうなのか、と少々危惧してしまうのです。
だからこそ、これまでは「風神雷神のユニークな姿」という印象しか持っていなかった屏風に、今回の仕掛けによって日本人の信仰の形を見出したように、
オリジナルが何を訴えようとしているのか、と自分で改めて想像力を働かせる意識を持ちたいと思います。

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