e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

本番前の時代祭

10月25

anzai
時代祭の時代行列は例年正午に御所の建礼門前より進発しますが、今年こそは出発前の様子を見てみたいと思い、朝の平安神宮へ。
8時より2基の鳳輦に御霊代を遷す神幸祭が行われており、既にそこそこの人だかりができていました。
本番だと静々と進む御鳳輦がなんとも京都的ですが、應天門を多人数で担がれながらそろそろと潜り抜け、台座にやっとこさ仮座される際は珍しく「わっしょい」な風情でした。
9時になると、これという合図は無いものの、神幸列が平安神宮の大鳥居に向けて進行を始め、演奏しながら歩く雅楽隊や幟を持つ人々、歴史人物たちはそれぞれのルートで京都御苑を目指していきました。
付近からシェアサイクルに乗って京都御所・建礼門前の行在所へ。
京都料理組合による神饌物の奉献、白川女による献花、関係者が榊を納めたり、維新勤王隊列が京都御苑を出発する前と、平安神宮に到着した時だけ演奏するという「朱雀行進曲」も。
少し離れたところで待機していた徳川城使上洛列の奴(やっこ)たちは、待機場所から行在所へ向かう際にも独特の掛け声を出していたので、次回は御苑での裏舞台の様子も観てみたい!

ところで、神社で風が吹いたり、蝶々が飛んでいるのを見かけたりすると、「神様が喜んでいる。歓迎してくれている」という話を聞いた事があるのですが、ちょうど行在所祭の最中に、2匹の黄色い蝶々が目の前を横切って行ったのです。
時代祭は平安京の最初と最後の天皇を祭神として、その二柱の神々に現在の京都の様子を見てもらうためのお祭。
3年ぶりに斎行された時代行列を、お二方が喜んでおられたのでしょうか。

2022年の時代祭関連動画はこちら

「おもろいおっちゃん」に会いに

10月3

issey 先日、父が楽しみにしているという、『イッセー尾形の一人芝居「妄ソー劇場」』を観に京都府立文化芸術会館を訪れました。
早速イッセーさんが描いたイラスト入りのTシャツを購入。

自分にとって初めてイッセー尾形という人物を認識したのは、阪神淡路大震災の際に延々と流れていたACのコマーシャルだったので、
以来、俳優やナレーターとしての活躍をテレビの画面を通してみてきました。

開演前のアナウンスもご本人のもの。思わずくすりと笑わせてくれます。
人間観察を笑いに昇華させた小劇と小劇の合間には、暗転する舞台の端だけスポットライトが当たり、イッセーさんがその場の姿見と観客の前で衣装替えするのです。
ドーランを塗り、もみあげもヘアマスカラでしゅしゅっと染めて、紅をひく表情も仕事人そのもの。
再び舞台の真ん中に戻ったかと思えば、よく通る最初の一声で観客を湧かせます。

会場に集まっているお客は年齢層が高めでリピーターが多い様子。
世代の違いか、ネタによっては内容がよく分からないまま周囲の爆笑に戸惑いました。
しかしながら、テレビのナレーションにおいても、声を聞いただけでその飄逸なキャラクターを連想させ、
自分の芸名を冠した、しかも一人芝居で何年もファンを魅了し続けているというのは脅威的なことです。
今回初めて実際に本人を観ましたが、こういう劇場公演なら演劇人としてもっと色んな側面を観る事ができそうです。

ホールを出ると、3年ぶりに行われるというサイン会を心待ちにする人々の長蛇の列が既にできていました。
あの笑顔を前にすれば、きっとつられて笑ってしまい元気が出るでしょうね。
イッセー尾形さんが「世界で一番好きな劇場」と呼ぶ京都府立文化芸術会館での次回の公演は、来年3月を予定されているそうですよ。

自然の中から見出されるもの

9月27

bonsai

大徳寺山内の最北にある塔頭・芳春院

現在、伽藍内の拝観はありませんが、2021年より盆栽庭園を開園しています。
看板は立ててあるものの、よっぽど近づかないと気づかないくらい。

受付で目録を受け取り、お庭を一周するように配置された作品の前で立ち止まっては覗き込んだり離れて眺めたり。

大陸から伝わったとされる盆栽は、「自然の中のどこにでもある仏性」の象(かたち)として創作されたものだそうです。
水石(すいせき)とは「山水景情石」の略称で、石を鑑賞する文化のこと。日本古来から伝わるものだとか。

なんの知識も持ち合わせてはいないのですが、盆栽を観るのは好きです。
自然のもたらす曲線美と人の手が加わった力強さが、ルネサンス彫刻を観ているときのような気持ちになるのです。
誰もいない庭園の中で床几に腰掛けていると、お彼岸の涼しい風に、鳥のさえずりと遠くから木魚のやわらかい音が載ってきました。

春には桜の作品が置かれ、庭園内の紅葉の木の麓に立てば、開けた空の向うに比叡山も見渡せるので、
これまで訪れてきた寺社とは違う趣のお花見や紅葉狩りができそうです。

有名な戦後武将や茶人、座禅に禅庭、精進料理、月釜。
禅やサムライに興味のある人にとって、大徳寺は見どころの宝庫。
いつ訪れても外国の方がぽつり、ぽつりと歩いています。
きっとこの盆栽庭園もこれから注目されるはず。教えて差し上げたい!

340gへの挑戦

8月31

fc
8月も終わり。京都では小学校も始まりました。

話題が前後しますが、先日ご紹介した送り火鑑賞スポット周辺のお食事処は、
エフシーダイニングテーブル」というステーキのお店。
「胃にもたれないので最近気に入ってる」という父からの情報です。
主にアンガス牛、厳選した冷蔵熟成牛肉を使用しているそうです。

画像は、アンガス種のサーロインとリブアイステーキ各340g。
誰もが耳にした事のある「サーロイン」。
「サー」とは称号の事で、牛肉の中で唯一称号が与えられた部位なのだそうです。
赤みと脂身がきれいに分かれたアンガス種のサーロインは、噛み応えがありました。
熟成したアンガス種のリブアイは、ステーキ肉としては最上級とされ、肉質柔らか。
いずれも、テーブルの上に置かれてからも徐々に熱が中まで通っていくので、目の前に運ばれて来たら何はともあれ、堅くならないうちにすぐに味わうのがおすすめです。

なお、340g以上完食した人は、番付表に記入できるとのことで、一部の壁には手書きのメッセージがびっしり。
立地柄、学生さんが多いようで、お店を訪れたグループも大学生らしき男子だち。
若者でも気軽に来れるステーキハウスという事ですね。
340gに挑戦したのは初めてでしたが、意外に難なく平らげました。
でも家族でシェアしていたせいか、番付表は頂けませんでした。残念!

お肉がまだ上手に食べられない小さなお子様には、
国産本格ソーセージが食べやすいです。席数が限られるので、予約が無難です。

ネットの力で守っていこう

8月18

okuribi 2022年の五山の送り火は、3年ぶりに本来の形で五山全てが灯されました。

今年は四山を見渡せる西陣織会館の鑑賞会へ。
十二単の着付けを鑑賞したり、西陣織の土産物を見たり、湯に浸かった繭から糸を引き出す「座繰り」を実演するスタッフさんと語らう間に外は激しい雷雨。
それでも、これまでどれだけ酷い土砂降りでも点火されてきたので、心配はしていませんでした。

エレベーターで順に屋上へ出ると、不思議と雨が止んでいました。
安全確保の為でしょうか、今年は大文字と妙法は点火時刻を遅らせたそうです。
待機中の報道カメラマンが携帯電話を片手に、「船形が先に点いてる!?」と動揺していましたが、これもまたレアな一幕でした。

屋上にはたくさんの人が集まりましたが、広いので混雑が気になることもなく、雨上がりの送り火は想像以上に綺麗でした。

SNS上では、様々な場所から撮られた美しい送り火の光景や、それを眺める人々の思いが銘々に綴られていました。
一方で、護摩木に亡くなった人の戒名ではなく個人的なお願い事をしたためる人がいる事に違和感を覚える、というご意見や、点火時間に合わせて照明を落として景観の維持に協力するマンションやビルが減ってしまった、と嘆く声も見受けられました。

疫病禍で親から子、孫へ伝統を語り継ぐ難しさ。感想を述べ合うだけでは伝統を守ることはできません。
マンパワーだけでなく資金もやはり必要です。
クラウドファンディングにより防鹿柵で火床を守るなど、インターネットの影響力を借りて、今後はこういう情報ももっと発信していかねばと、気持ちを新たにしました。
関連動画はこちら

何人もの背中

8月10

3dai 先日は、親子3代競演を楽しみに、金剛能楽堂へ。

能楽金剛流の若宗家・龍謹さんが幣を振り舞う三輪明神に、お祓いを受けたような気持ちになりました。
およそ2時間もの長い『三輪 神道』という大曲を演じ切られるとは、凄まじい集中力です。
昔は、恰幅の良いご宗家永謹氏が大きく、うら若い龍謹さんが華奢に見えたこともありましたが、今度は体格も声の大きさも反対のように見えました。

半能『岩船』で、初シテを務める6歳の謹一朗くんが橋掛かりに颯爽と現れた瞬間から、自分の涙腺が緩みそうになりました。
まだ小さいけれど堅く握りしめた拳を前に出し、大勢の大人たちに囲まれた重圧の中でも、正確に流麗な円を描いて舞う姿に大変驚きました。
そして、ご両親に似て、端正なお顔立ちです。

金剛流26世宗家の永謹さんが息子の龍謹さんを、また孫の謹一朗くんを若宗家の龍謹さんが背後で見守る表情は厳しいものでした。
伝統の重みに対峙する真摯な志の連なりは、3代だけのものではないからです。

16日は「大文字送り火能」。 蝋燭を灯し、いつもより薄暗い環境で、夏の夜に背筋が凍るような演目が毎年採用されています。
ことしの演目は『善知鳥(うとう)』。地獄で責め苦を与えられるという演出が能楽ではどう表現されるか、注目です。

27日、9月3日には「日本全国能楽キャラバン! in 京都」があり、京都市出身の世界的指揮者・佐渡裕氏、伏見稲荷大社宮司の舟橋雅美氏と、それぞれのゲストが上演曲にゆかりのある講演をされる予定(10月30日は東本願寺能舞台が会場)です。

巡行と神輿の後のお楽しみ

8月2

iwai
祇園祭も後祭山鉾巡行、神輿渡御という佳境を越えて、毎年寂しさを感じていた人達に朗報です。

7月28日の神輿洗の直後から、「祝い提灯行列」という行事がこれから毎年行われるそうです。
祇園町にゆかりのあるお店等の有志が、銘々に提灯をこしらえ八坂神社の神輿を迎える神賑わいとして、界隈を練り歩くというもの。

この提灯行列は江戸中期の「花洛細見図」や「祇園御霊会細記」にもその様子が描かれているそうで、5年程前から本格的に盛り上がってきたようで、京都人でもまだ余り知る人の少ない行事です。

いもぼうの海老芋や巨大なおこぼ、吉本新喜劇のマークなど、祇園の人達の洒落がきいた38基もの提灯が、山鉾行事とはまた違ったユルさで楽しい。
「この提灯、なんで野球の球なんですか?」「店主の趣味らしいです」「この双子の赤ちゃんは?」「おくるみです…(←おめでたいイメージ?)」と歩きながら思わず尋ねてしまいました。
途中、「広東御料理 竹香」前で御接待を受け、行列はしばし休憩。鷹山の関係者も何名か参加されていたようで、みんな本当にお祭好きですね!!

先頭を歩く祇園篠笛倶楽部の笛の音は、一本の糸のように揃っていて美しく、八坂神社を出発したときのはつらつとした曲調から、夜の帳が降りてきた白川筋を通るときには穏やかな音色に変わり、夕涼み散歩のように、一緒に歩いて楽しませてもらいました。

今年は短縮ルートでしたが、例年は19時頃から2時間かけて祇園町の南北と細かく練り歩かれます(※雨天中止)。
現在のところは公式サイトが無いそうなので、こちらのサイトを来年のご参考に。
来年は7月10日と28日の両方で観る事ができるといいですね!

関連動画は随時こちらに追加していきますね。

それぞれの祈りの祭典

7月27

kuji3年ぶりに行われた祇園祭の後祭山鉾巡行
先立つ20日の曳き初めでは、東西の通りにある鷹山と、南北の通りに建つ北観音山が、三条新町にて大接近し、お互いの囃子方と車方が思わず挨拶を交わすという微笑ましいハプニングもあったそうです。
巡行本番では、鉾町を出発した鷹山が、御池通りに出るまでに、電線ぎりぎりのところで最初の辻回しをするシーンでは、町内の床屋さんが、大量のお水の提供をしていました。
2014年に大船鉾が復帰を果たしたときに沿道から聞こえたように、進む鷹山に向かって「お帰りなさーい!」と大声で叫びたかったです。

2022年の祇園祭は、前祭は連休、後祭は鷹山の復興という大きな話題もあって、
この日を待ちわびた多くの人が祭に繰り出しました。

しかしながら、引いては押し寄せる疫禍の中です。
知人達の中には、自身やご家族の体調を考慮して、参加が叶わず断念した人もいました。
また、外出を控え自宅の中で祇園祭のしつらいを楽しむと決めた人もいました。
それもまた、ひとつの賢明なご判断だと思います。

漆がまだ塗られていない白木の香りや
脳天に響く鉦の音までは再現できませんが、
こちらの動画で鷹山への搭乗を体験してみてください。

七夕飾りの意味

7月6

77
子供が自作の七夕飾りを持って帰ってきました。
今年も、近所の花屋に笹の葉を一緒に買いに行こうと思います。

技芸上達を願い五色の短冊にしたためて、神様の依り代となる笹竹に吊るす七夕の笹飾り。
五色とは、古代中国の陰陽五行説で世の中を構成する五行を色で表したもの(木=青(緑)、火=赤、土=黄、金=白、水=黒(紫))。
これら五色は、寺社の飾りや鯉のぼりの吹き流しなどにも魔除けとして用いられていますね。

ところで七夕飾りは独特な造形ですね。各家の軒場にさらさら揺れる笹飾りを見ていると、共通しているものがあります。

一言で表すと、
吹き流し:「手芸上達」「魔除け」
三角つなぎ・菱つなぎ:「手芸上達」
輪つなぎ:「天の川。夢や人のつながり」
野菜:「お供えもの」
折り鶴:「長寿祈願」
紙衣(かみこ):「手芸上達」
巾着:「金運上昇」
綱飾り・貝飾り:「豊作、大漁」
提灯:「魔除け」

なんと、七夕飾りの紙くずを始末するための「くずかご」まで笹飾りとしてあるとは何たる配慮。
商売繁盛を願う福笹と比べても、誰でも作れてとっても庶民的です。

それぞれのお飾りの意味や作り方は、今やインターネットでも得る事ができるので、子供と一緒に作り足してみるのもいいかもしれませんし、
受験や資格試験、音楽など自分のスキルアップのために日々勉強や修練に励んでいる人も、折り紙で折って気持ちを新たにするのもいいですね。

金銀の箔を粉末にした、きらきらの砂子のようなお星さまを、幾つになっても心の中で輝かせていられますように!

宇治で晩ごはん

6月29

afuhi 先日宇治を訪れた際に感じたのは、「いつの間にか、新しいお店がどんどんできている!」。
寺社が閉まる夕方になると、宇治橋商店街は軒並み暖簾を降ろし、昼間は抹茶ソフトクリームを片手にそぞろ歩きをしていた人達の姿もなくひっそりとしています。

夕食を採る場所を求めて歩いていると、「大阪屋マーケット」という横丁の風情の市場があり、どうやら多くの人がここに吸い込まれていったようです。
立て看板を見ると「SINCE 1962」とあり、「そんな前からあったの?」と自分達もついついその中へ。
10以上の店舗が入っており、営業日も様々。
ちょい呑みできる居酒屋の熱気もあれば、反対側には落ち着いたテーブル席のレストランもあり、駄菓子屋や整体医院まで入っています。
本格ナポリピッツァに強く惹かれたのですが友人の好みに合わず、次回は必ず行くと心中でキメて、市場を後にしてまたうろうろ。

薬膳料理 茉莉花」も残念ながら定休日という事で、行き着いたのが「afuhi uji」。
はるばる宇治へやってきた大原の野菜をふんだんに使った、おじや風リゾットとパスタのお店です。
町家のおざぶに歩き疲れたお尻をやすませて、豆タイル貼りのおくどさんにどっさりと置かれた野菜を眺めながら待ちます。
「大原野菜プレート」はまさに自分好みで、花束の様に鮮やかな多種多様な野菜が盛られ、オリーブオイルやミネラル豊富な塩、バーニャカウダソースを付けて歯応えを楽しみながら頂きます。
久しぶりにこんなご馳走サラダが食べたかったのです。
「茶粥風」のおじやんリゾットも、使われるお茶を緑茶か抹茶か選べるのは宇治ならでは。
塩加減もちょうど良く、鯛とも相性がよく、家でも真似して作ってみたくなりました。

平等院やお茶屋だけを巡って帰ってしまうのは勿体ない。
間もなく鵜飼も始まるので、夜も歩きやすくなるでしょう。
夕暮れの宇治川を歩いた後は、夜のお食事も楽しんでみてくださいね。

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