e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

「音を織り、織りから聞く」

9月24

piano 大徳寺に程近い多目的スペース「遊狐草舎」にて、「織物とピアノ」をテーマとした映像とひょうたん笛、手回しオルゴールとトイピアノの音色を味わう催しがありました。
中国雲南省の徳宏州に暮らすタイ族はその昔、夜に男子が想いを寄せる相手の家の前でひょうたん笛を奏で、女子は機織りの音で自身の人柄を表現したといいます。
織り上がった品は結婚の際にお披露目され、その織目や端の処理の美しさを見て、花嫁の器用さや、どのタイミングで男性が訪れていたのかを推し量るのだとか。
そう語るおばあさん達が織機に腰掛け、両手両足を巧みに動かして独特のリズムを奏でながら織る姿を映像で観ていると、どこかパイプオルガンの演奏光景に似たものを感じます。同様にピアニストの寒川晶子さんも、織り姿がピアノを弾いている様に見えたと話していました。
このテーマに合うとして提供された藤田織物の帯は、今主流の機械では無く職人の手作業で立体的な造形をしており、それを寒川さんが「五線譜に書き込まれた音楽のよう」と表現していたのが、とても腑に落ちました。
作者が空けた穴に応じて、ころころと涼やかな音を響かせる手回しオルゴールもまたしかり。
「演奏会」「音楽会」と聞くとどこかのホールで、観客が身体全体で聴く事に集中するのも好きですが、人の息遣いや虫の声が聞こえてくるような小さな空間で、座布団に腰をおろしながら繊細な音を紡ぎだしたり実験的な試みができるのも、これからのクラシック界に面白い広がりをもたらしてくれるのではないでしょうか。

お寺でトイピアノ演奏会

9月24

piano 大徳寺玉林院でのトイピアノ演奏会に行って来ました。
40cm四方くらいの小さな小さなピアノは、おもちゃとは思えない程、音の鳴り始めは金属の様に澄んで鋭く、その後はコロコロとした丸みも感じるような、やわらかな響き。それは、木琴のものとも、オルゴールのものとも違う繊細な音色でした。

ここが会場となった経緯には幾つかの理由があり、まずは京都出身のピアニスト・寒川晶子さんが玉林院の保育園に通っていたという縁のほかに、「トイピアノの為の組曲」を作曲したアメリカの音楽家・ジョン・ケージ氏が、コロンビア大学で仏教学者の鈴木大拙氏に「禅」について学んだという共通点があります。
ジョン氏がそうであったように、即興演奏では本堂の外から聞こえてくる葉擦れや、にわかに勢いづいたかと思うと急に静まる蝉の鳴き声、観客席にいる赤ちゃんの声にも寄り添うかのように、じっと耳を澄ませながらの演奏が続きました。
ふと彼女の両手でトイピアノが本堂から縁側に持ち出されると、観客もつられて外に出て目を閉じ耳を傾けます。

「自然の中でピアノを弾いてみたい。」と話していた寒川さん。
グランドピアノに比べて持ち運びやすいトイピアノなら、夢ではないかもしれません。
京都のどこかでまた、こんなコンサートが開かれますように。