e-kyoto「一言コラム」

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75歳に何を思う

6月22

tuji陶芸家 辻村史朗」展の最終日に滑り込みで行って来ました。

特に茶の湯に係わる人の中で著名な陶芸家である事は知っていたし、白釉の茶碗を「きれいだな」と眺めた事もありましたが、その人となりを知ったのは初めてのことでした。
冒頭に「作品は作家自身の内面の人間性と共に評価される」といった趣旨のコメントにあった通りの展覧会でした。

洋画家を志す道半ばで自己を追求したいという思いが募って禅門を叩く。
京都では大原を最初の創作活動の拠点として京都市美術館の前や道端で作品を売ったりしていたそうです。
名も無き大井戸茶碗に感動し、師匠を持たず独学で作陶の道に進み、妻と共に人里離れた山間の奈良県水間町に自宅兼アトリエを一から作り上げて創作に没頭する。
常に「今」の自分の心の声に素直に耳を傾け、その声に従って自らを真っ直ぐに導く「あるがまま」のシンプルな生き様。
多くの人が憧れと親しみを持っているのが、おもてなしにも使われた自宅の食器からも伝わってきます。

奇しくも父の日。同行した父親は70歳ですが、辻村氏が75歳を迎え、創作の対象を茶碗のみに絞って創り続けているというところが心に留まったようです。
父の兄が75歳で職場の第一線から退き、若い頃程には自由の利かなくなったその後ろ姿を見ているので、75という年齢はこれまで持っていたものを削ぎ落し、本当にやりたい事に向かって行こうという気持ちが沸き起こってくるものなのだろうかと話していました。

当展覧会に引き続き、祇園のギャラリー「ZENBI-鍵善良房-」では「辻村史朗-茶盌 TSUJIMURA SHIRO 100 WORKS」展が開催中です。

2022年6月22日 | 芸能・アート

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