e-kyoto「一言コラム」

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素朴絵…日本美術の側面

10月16

soboku
2017年に「地獄絵ワンダーランド」展が好評を博した龍谷ミュージアムが、今度は「素朴絵」を紹介しています。
ここでの素朴絵は鑑賞品としてだけでなく、時には庶民には手の届かない「巧い」作品の代替として、季節行事の道具として、また仏画として信仰対象にもなってきたのだそうで、ユーモラスなタッチで広く知られる「大津絵」は、江戸時代に旅の土産物や護符として人気を集めました。

冒頭から、どこかほのぼのとした空気感が漂う「絵因果経断簡」が日本最初の絵巻だという事にまず驚き。
素朴絵の媒体は絵巻や絵本、掛軸や屏風、または埴輪や仏像等の造形物にまで多岐にわたり、遠近感の無い建物、顔文字のごとく簡略化された托鉢僧、地獄で散々な刑に処されるも全く苦しく無さそうな人々の表情に、私達は魅了されていきます。
室町時代の「つきしま絵巻」はその最たるもので、平清盛が大輪田泊(港)を造成する際に人柱を立てたという悲惨な伝説を描いているはずが、絵巻の中はまるで工事現場の見学ツアーのようにのどかです。
果たしてこれらは意図してユルく描かれているのか、それともただ「ヘタウマ」なのか、そもそも昔の人はこれらを観て「ユルいな~」と楽しんでいたのか…。
上階に移動すると、伊藤若冲や白隠、尾形光琳ら著名な絵師等による素朴絵が見られ、こちらではどこか洗練されたおおらかさを感じる事ができます。

仕事のこと、子育てのこと、学校のこと、過去のこと、これからのこと…色々と悩みの尽きない私達ですが、一度これらのゆる~い素朴絵の前に身を置いてみませんか?
眉間が緩む瞬間がきっと、あると思います。

2019年10月16日 | 芸能・アート

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