師から弟子へ。親から子へ。
子供用に注文していた「アサギ椀」がようやく完成したとの連絡があり、受け取りがてら塗師の西村圭功さんの新しい工房を見せて頂く事にしました。
前回お邪魔した鞍馬口の京町家の工房ではなく、新大宮商店街に構えたという「新工房」へ…て、看板も何も無い、元呉服店の名残りのショーウインドウがシャッターの間から覗いている古い建物でした。
見た事の無い道具ばかりで、長い人毛を板で挟みカットしては繰り返し使える刷毛はアイデアもの、木地を削るためのロクロには、ミシンの様なペダルが付いています。
それぞれの工房での分業が当たり前の業界ですが、それをここに集約する事で後継者を育てているのです。
休日だったため、他の職人さん達が作業する様子は見られませんでしたが、お弟子さんが作ったアサギ椀を掌ですくい上げて見ます。
覗き込んだ椀の底に、うっすら刷毛目が濡れたような光沢をたたえます。大量生産品にはみられないこだわり。
漆器作りは、日々変動する気候に応じて使う漆の配合を変えたり、乾燥庫に濡れたふきんを入れて湿度を微調節し、15分ごとに様子をみたり。
それはもう気の遠くなるような手のかかりようで、「好きでなければできないだろうな…」の一言です。
さて翌朝、アサギ椀におすましを入れ、1歳の子供に出してみました。
小さな手では上手く扱えなくてひっくり返さないか、恐る恐る様子をみていましたが、片手で縁を掴んでからもう片方の手を添えたり、腕を伸ばして両手で持ってみたり、意外に上手に持つ事ができました。
成長の具合にもよるのでしょうが、プラスチックの食器を使っていた時は、少々置き方も乱雑でした。いつもより薄い縁に触れた事で、無意識に扱い方を少し変えたのでしょうか。
漆器の手触り、重さ、薄さ、色。小さな指で何か感じ取ってくれているかな。
なお、祇園にあるデザインスタジオ「スフェラ」では、西村圭功さん他「京都の4人のクラフトマン」に焦点を当てた展覧会が7/28(日)まで行われています。